いまひとつ、スッキリしない腹の決め方だった。埼玉県朝霞市の国家公務員宿舎の建設問題だ。野田首相が決断した「5年間凍結」の真意について、「モーニングバード!」では疑念や不信の声が強く出た。
宙ぶらりんのまま5年
「一番やってはいけない決定だった」と怒るのは、地元で建設反対を訴えている朝霞基地跡地利用市民連絡会の大野良夫代表。
「5年間凍結となると、建設費の105億円がその間、宙ぶらりんになる。その金を震災復興に回してほしいと訴えていたのに」
決断が遅れたために、3万平方メートルの敷地に560本あった樹木が400本も切られ緑の森も失われた。朝霞市の小澤隆副市長も「つらい結果になった」と語る。宿舎には保育所や夜間診療所など、市の関連施設も建設されることになっていた。先行き不透明のまま手をこまねいているわけにもいかず、「早く代替の土地を見つけるよう模索していかなくては」と焦りの表情だ。
政治家や官僚の言葉はよくよく注意して解釈しなければならない。「凍結」について、安倍・福田内閣の渡辺行政改革担当大臣の補佐官で、株式会社政策工房社長の原英史氏は「中止ではない。5年間はやらない。いつかはやる」という意味だと言う。
廃止・売却いいながら、実は存続模索
このほかの国家公務員宿舎について、安住淳財務相は都心の港、中央、千代田区の宿舎は危機管理用を除く16か所を廃止・売却すると表明した。しかし、これについても、リポーターの所太郎は「どういうところで検討し、どういう方法で決めるのか」といぶかる。「公務員宿舎の削減のあり方検討会」で来月(2011年11月)をめどに具体案を出すとしているが、「公務員宿舎のあり方」検討会ではなく、「削減のあり方」検討会。所は「ここに何か含むところがあるな、と思ってしまう」という。公務員宿舎廃止の声が強い中、批判の目をかわしながら上手に削減し、存続を考える検討会と読んでしまうのだろう。
二転三転、迷走した公務員宿舎問題はもともと事業仕分けで凍結されたものを野田が財務相の時に着工を認め、首相になってまた自分で凍結したわけだ。月刊誌『ゲーテ』編集長の舘野晴彦はこう批判する。
「野田さんという人は、どじょうとか、そういうことをおっしゃって、実直そうに見えて、こんなひどいことを堂々とやる。これから気をつけなくてはいけない」