「暴排条例」で企業・市民も暴力団に立ち向かえって…やっぱり報復怖い

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   指定暴力団は22団体、その数8万人といわれる。この反社会的団体を社会から排除しようと昨年4月(2011年)から「暴力団排除条例」の導入が進んでいるが、最後に残った東京都と沖縄県で10月1日から施行され、暴力団に対する包囲網が縮まった。市民や企業に繋がりを断つことを求め、これまでの「警察対暴力団」から「社会対暴力団」に網を広げて組織の弱体化を図ろうという狙いだ。

   孤立化し資金源を断たれて追い詰められた暴力団が、組織を維持しようとかえって暴走する心配も強い。暴力団による凶悪事件が多発しているなかで、立ち向かえといわれた企業側、市民への報復に対策はとられているのか。

警察「社会ぐるみの仕組み作り」

   暴力団排除条例は都道府県によって中身に多少の違いがあるが、東京都では次のような行為が禁じられる。(1)不動産業者が暴力団の事務所に使われることを知りながら部屋を貸す(2)ホテルが暴力団の集会に使われると知りながら会場を提供する(3)建設業者が暴力団を工事に係わらせ利益を上げさせる―などだ。違反すると公安委員会から勧告を受け、従わないと社名を公表される。ただし、暴力団と知らず、結果として活動を助長し利益を与えることになった場合は、直ちにペナルティーを科せられることはないが、分かったあとは関係を断ち切ることが求められる。

   警視庁の指揮犯罪対策総務課の住友一仁課長は「『社会ぐるみ対暴力団』の仕組みを作り、弱体化さらには壊滅を進めていきたい」と言う。しかし、「社会ぐるみ」とはいっても、暴力団組織はとっくに『銃社会』を実現しているといわれる。市民が素手で立ち向かうわけにはいかない。はたして凶悪化する暴力団を壊滅できるのか。新たな捜査手法がなければ抑え込みは難しくなっているともいう。

昨年施行の福岡では経営者宅に発砲や手榴弾

   指定暴力団が5団体もひしめき、全国に先駆けて昨年4月に暴力団排除条例を施行した福岡県。暴力団員を雇用していた会社、暴力団幹部と飲食を重ねていた会社経営者など、すでに50社が名前を公表され、公共工事から外された。なかには業績悪化に陥る会社も出ている。

   その一方で、見せしめなのか、市民の安全を脅かす事件も相次いでいる。福岡市内の閑静な住宅街にある大手企業の会社社長宅の玄関先で、殺傷能力のある手榴弾が見つかった。建設会社を狙った発砲事件が今年に入って8件、9月には2社が狙われた。いずれも暴力団による発砲とみられている。暴力団との取り引きを断ち切ろうとして発砲受けた建設会社の社長は、断ち切ることの難しさをこう訴える。

「関係を断ち切ろうと思っている会社は多い。でも、玄関先に発砲されるうちはいいけど、本当にやられたら怖い。警察や行政はどこまで本気で考えているのか。本気度が感じられないところがある」

   「ここが最大のポイントですよね」というキャスターの国谷裕子に、ゲストの日弁連の前民事介入暴力対策委員長の三井義廣弁護士は「それができるのは警察しかない」という。その警察力にも限界がある。暴排条例の施行で企業側が「取引はお断り」と応対した途端に、いきなり「バーン」「ブスリッ」もあり得る。まずは、警察が暴力団の実態に合わせた新しい捜査・摘発手法を導入し、検挙率を高めて元を断つことではないか。

モンブラン

*NHKクローズアップ現代(2011年9月28日放送「どう決別する暴力団~排除条例・市民の模索~」

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