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「死の町」じゃないのか!?2人のジャーナリストの実感

   最後にジャーナリズムのあり方を考えさせられる記事について触れたい。 福島第一原発周辺を視察したあとの感想で「死の町」と表現し、前日の囲み取材で記者に「放射能つけちゃうぞ」と問題発言したとして、辞任に追い込まれた鉢呂吉雄前経産相のケースを新聞社系週刊誌が異なる視点で取り上げている。「週刊朝日」はメディア側に問題がなかったかと問いかける。まず「死の町」というは不適切な表現なのだろうか。当の鉢呂前経産相はそう新聞に書かれたことを驚いたと話している。

   元共同通信論説副委員長・藤田博司は「死の町」と感じるのは自然だと擁護し、ノンフィクション・ライターの吉岡忍も3月下旬に原発から半径20キロ圏内に入ったとき、まさにそこは「死の町」だと思ったといっている。

   「放射能つけちゃうぞ」発言については、鉢呂前経産相はまったく記憶にないという。先の藤田は、当事者である毎日新聞の記者が「『放射能をつけたぞ』という趣旨の発言をした」と、「趣旨」と書いているのは不自然だとし、表現も各社まちまちで鉢呂前経産相に真意を確認した形跡もないと断じ、この程度の事実で閣僚の進退や責任を問うのはおかしいと疑問を呈している。

   吉岡は今回の報道の背景には被災者たちを弱者とみなす裏返しの差別を感じると、こう話す。

「そうなった理由には、遺体を報じられなかったメディアの形式主義があると思う。この震災では多くの被災者が瓦礫の下などに無惨に横たわる遺体を見ている。だから悲しみも大きいんです」

   そういう現実から目をそむけたメディアは、被災の残酷さを浅くしか理解しなかったため、今回のような見当外れの報道に陥ったのではないかと指摘する。

   経産省の「総合資源エネルギー調査会」の委員を原発推進派が多数を占めていたため、鉢呂前経産相はそれを半分にしようと予定していたのが、経産省にすれば煙たかったのではないかと語っている。邪魔者は引きずり降ろすという経産省の意向が、記事に反映されたのではないかといいたいのであろう。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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