今度は愛知県の花火大会だ。東日本大震災の復興支援がテーマだったにもかかわらず、福島県で作られた花火の打ち上げを直前に中止した。「放射能をまき散らす恐れがある」といった声が寄せられたためという。京都の五山の送り火でも、放射能をめぐって岩手県陸前高田市の薪が使用されず、後味の悪い結果を残したが、同じような事態となった。
「安全」説得するデータ準備せず
この花火大会は愛知県日進市で18日(2011年9月)に行われた「にっしん夢まつり・夢花火」。今年で10回目。約11万人が訪れ2000発の花火が打ち上げられた。被災地の宮城、岩手県、それに福島県川俣町の業者による80発も打ち上げられることになっていた。しかし、メールや電話で約20件の抗議や苦情が寄せられ中止となった。
川俣町は一部が計画的避難区域に指定されているが、花火業者のいるところは区域外だ。業者は「花火は屋内で仕込むものだから放射能の影響はないと思っている。忙しい最中に送ったのに非常に残念だ」と話す。専門家も「人が普通に暮らしているところなので、そんなに心配することはない」
実行委員会も当初は問題ないと判断していたが、その根拠となるデータを持ち合わせているわけではなかった。市民の声の中には「それほど大きな危険性があるとは思わないが、当て推量ではなく、せめて花火を計測する程度のことができないのか」といった指摘もあった。
腹据わらないまま「復興支援」
司会のみのもんた「わかるね、それは当然です。そういう配慮が市になかったのは事実。ちゃんと花火に数値をつけて送ってもらえれば何の問題もなかったかもしれません」
コメンテーターの杉尾秀哉(TBS解説・専門記者室長)は「(市民の苦情や抗議は)ある程度、想定できたことだと思いますね。この意見も過激な意見ではない。実行委員会はそうした不安や心配に応えられるものを用意しておくべきだった」
三屋裕子(スポーツプロデュサー)も「いろんなことを言ってくる方はいらっしゃいますよ。それに対して、市側がしっかり説明できることが大切だ」と市や実行委員会の準備不足を批判した。
市長は「本当にこれでよかったのかなという忸怩たる思いは今もある」といっているが、復興支援という思いとは裏腹に、腹の据わらない、事なかれ主義が、混乱をよけいに広げているようにも思える。