例によって大学時代の女友達との飲み会。女子会の肴と言えばコイバナかグチが相場だ。しかし、コイバナもそうはネタがあるわけでないので、当然グチが多くなる。20代ならば上司や同僚の不満が多いが、30代になると「最近の若いもんは…」が多くなる。ただ、世代間ギャップを嘆くばかりでなく、時代の変化に驚くということもある。
雑な撮影を加工でごまかすカメラマン
発端は美術関係の仕事をしている友人の話だった。勤め先に雑誌の取材が入り、所蔵作品の撮影が行われた時のこと。撮影にやってきた20代後半のカメラマンの仕事の仕方に驚いたという。撮影を見守っていた彼女は、若いカメラマンがあまりにも「雑」に仕事を行うことに怒りを覚えたという。かつては、作品の設置場所、背景にゴミはないか、布などに皺やシミはないか、作品に指紋がついていないか、照明で作品の世界観が変わらないかなど、細心の注意を払って撮影されていた。しかし、若造クンはさほど気にせずただひたすらシャッターを押しまくって帰っていったのだ。
ところが、プレビューで送られてきた写真の出来は上々。その時になって彼女は気が付いた。若造クンは撮影よりも加工のほうが重要だったのだ。人間のモデルでは以前からやられているが、静物の写真でも同じように加工されることに驚き、彼女は時代の違いを感じたという。
それを聞いていたスチールカメラマンのマネージャーを務める女子が口をはさんだ。最近、カメラマンの仕事が変わってきているというのだ。デジタルになり、撮影よりも加工のに時間をかける人が増えたという。それも30歳を境に加工派が多いという。32~33歳はフィルム作業を知っている最後の世代になるそうだ。そのため、彼女もやはり下の世代の撮影現場は「雑」に映るらしい。とにかく後で加工処理をすればいいと思って撮影しているカメラマンが多いことを嘆いていた。
と、ここで音楽業界にいる友人が大きくうなずいた。レコーディングの際、やはり若いミキサーに同じことが言えるのだそうだ。曲の仕上がりはミキサーの腕にもかかっているが、まずは演奏の出来不出来が大きく作用する。そのためアーティストは何度も何度も録音するのだが、ちょっとピッチがずれていたり(プロの耳による判断)しても、加工できるから何テイクも録音しないことがあるらしい。