経産大臣に決まった枝野前官房長官が、早くも力量を問われそうだ。福島第1原発事故の原因を究明するため、衆院科学技術・イノベーション推進特別委員会(川内博史委員長)が東京電力に再提出を求めていた「過酷事故の運転手順マニュアル」は、やはり真っ黒く塗られ、表紙と目次だけのわずか3枚の紙だった。委員会は政府に経産相名の提出命令を出すことを求めている。
表紙と目次。読めるのは2行だけ
川内委員長が12日(2011年9月)に明らかにしたところによると、東電が再提出した3枚の紙は1枚が手順マニュアルの表紙、残り2枚が目次で、目次の50行のうち48行は墨で黒く塗られていた。しかも3枚の紙はその場で東電が回収していったという。川内は「墨塗りだらけの資料では議論にならないわけで、経産省を通じ13日再々再度の要請を行う」としているが、実際は経産相名で東電に提出命令を出すことになるが、期限は切らないという。
スタジオでは怒りが爆発した。まず月刊男性誌『ゲーテ』の編集長・舘野晴彦が吠えた。
「どんな社会でも会社でもこんなの許さないですよ。あれだけの人が苦しめられているのに、事故半年後の会見にも社長は出てこなかった。
そもそも税金を投入して東電を救おうと決めたことが影響している。法的なものも使って絶対に出させるべきだし、世論もチェックしていく必要がある」
スピードスケート五輪メダリストの清水宏保「震災後すぐ、ある政府関係者に東電は国会答弁や記者会見で情報制限しているのではないかと質したら、その政府関係者は『東電が本当のことを言ってくれないのは事実なんです』と言った。もう半年もたっているのに東電の隠ぺい体質は続いている」
事故対策より「企業秘密」
東電は提出拒否、黒塗りの理由を「知的財産権の保護とテロなどからのセキュリティー」と説明しているが、会社の力だけでは原発事故を収束できない現状で、「企業秘密」を持ち出す神経が異常だ。司会の赤江珠緒も珍しく語気荒い。
「この期に及んで知的財産権の保護を言うが、放射性物質の漏えい・蓄積で財産を奪われた人たちに通用するわけがないと思いますがね」
東電は真っ黒く塗りつぶした紙の提出は、原子力安全・保安院の了解をとったという。保安院は経産省から離され、いずれ環境省の傘下に入ることが決まっているのに、元経産相の海江田万里は人事権を使って引き続きトップに経産省官僚に据えた。この辺りからすでにマニュアルができているのかも。東京電力に強制捜査をかけないと、次々と証拠隠滅されてしまうだろう。いや、もう遅いかもしれない。