「死のまち」と「放射能つけちゃうゾ!」。この2つの発言で鉢呂吉雄経産相が10日(2011年9月)に辞任を明らかにし、「野田どじょう内閣」はスタート9日目で早くもつまずいた。
「死のまち」発言―文脈見れば違和感少ない
ことの起こりは、8日の福島原発視察後に記者会見で行った「死のまち」発言。死のまちという言葉ばかりが独り歩きしていたが、実は鉢呂は次のように語っていた。
「福島のあの汚染は3回目でありますけれども、残念ながら人っ子ひとりいないまち、死のまちという形でございました。経産省の一つの原点ととらえ、福島の再生なくして日本の再生はない。それを第1の柱に野田内閣としてやっていく」
前後の文脈を繋げてみると、さほど違和感あるとは思えない。
リポーターの清水貴之が鉢呂の出身地、北海道樺戸郡新十津川に飛んで取材をすると、「几帳面でダジャレを言わず、暇があると街頭演説する真面目男。地元の人は誰ひとり悪く言わなかった」という話だ。
支援者の北海道議の池田隆一は「(死のまちという)状況をどう克服していくかということのほうが大事な発言なんで、それをちゃんとお話していたのですけどね」と、辞任は解せないという感じだ。
「放射能つけちゃうゾ!」はあまりの軽率
しかし、その後に報道された鉢呂の言動はよくなかった。視察を終えて帰宅した鉢呂が、議員宿舎前で記者たちに「放射能つけちゃうゾ!」とからかったというのだ。就任したばかりとはいえ、原発事故の責任が問われる経産省の大臣の言動とは信じがたい。まるでやんちゃな子ども。軽率だったことは否めない。
スタジオでは司会の羽鳥慎一が「『放射能つけちゃうゾ!』はダメですね、これは論外。人として問題だと思う。ただ、これでまた野党が首相の任命責任を追及し、国会が止まったらまた繰り返し。どうなんですかね」と心配する。
たしなめられた「説明しろって言ってんだよ!」
元共同通信記者の青木理は「迂闊な発言ではあるけど、これは暴言というより失言」と鉢呂を擁護しながら、鉢呂の9日の釈明会見で飛び出した記者の品格を欠く質問をむしろ問題視した。
鉢呂の「不信を抱かせるような言動があったというふうに捉えられたわけですが…」に、記者は「何を言って不信の念を抱かせたか、説明しろって言ってんだよ!」
これに他の記者が「そんなヤクザ言葉やめなさいよ。記者でしょ。敬意を持って質問してくださいよ」
青木「会見は糾弾する場ではなく、話を聞く場。ああいう記者の態度は許せない」
政治家も記者も質が落ちたのか。それとも、誰もかもイライラしているのか……