ボクシングの女子ミドル級でロンドン五輪を目指す南海キャンディーズのしずちゃん、山崎静代(32)が8日(2011年9月)、台湾で初の公式戦に臨んだ。これまで試合形式のスパーリングは何度もやったが、国際試合は初めてだ。
グローブ、練習着ホテルに置いたまま
しずちゃんの道は険しい。来年3月の全日本女子選手権で優勝するなどの好成績をあげるだけでなく、5月の世界選手権でベスト8に入らなければいけない。ロンドンは7月だ。「ガードが下がる」という欠点はいまだ克服できておらず、先月、東京で行われた日韓合同練習でも散々パンチを食らっていた。
本人も「無我夢中になるとガードが下がってしまう」と自覚はしているのだが、梅津正彦トレーナーは「甘いんですよ」とむしろ精神的なものをいっているようだ。たしか台北でも、組み合わせ抽選に手ぶらで現れてトレーナーにどやされていた。練習着、グローブなどをホテルに置いてきてしまったのだ。試合は夜だが、それまでに時間は十分ある。「練習する気がない」と叱られて、涙を流す姿はもうおなじみだが、いっこうにあらたまらないらしい。
レポーターの大竹真がわざわざ台北まで出掛けていっていた。梅津トレーナーは「必殺パンチが出るかどうか」。要するにクロスカウンターだ。これはしずちゃんがボクシングをやるきっかけとなった、マンガ「あしたのジョー」で主人公の矢吹丈が得意とするヤツだ。しかし、こいつは体重が乗ってないと効かない。
小柄な相手に連打浴び棒立ちダウン
ミドル級(65~75キロ)のエントリーは台湾2人、ベトナム1人としずちゃんだけ。2回勝てば優勝だ。最初の相手は台湾選手だった。試合は2分4ラウンド。さてーー。
相手はやや小柄だが手が早い。たちまち連打を浴び、棒立ちになったのをダウンと見なされて失点。2ラウンドから互角に打ち合い、3、4ラウンドは善戦したが判定は負け。しずちゃん初の公式戦は苦い結末になった。
終わって「悔しい。もう1回闘って金メダルをとりたかった」というが、梅津トレーナーは「いまのままではオリンピックには行けない」とはっきりいう。
試合会場に、しずちゃんの相方、山里亮太(34) がいた。カメラが近づくと「いま着いたところ」というが、試合はもう終わっていた。「明日だって聞いてた」
その足でホテルへ行くと、「えーっ」と嬉しそうなしずちゃん。「来たんや」
山里「来たよ、 さっき着いて」
しずちゃん、思わず涙ぐむが、「タイミング悪いな」
山里「ボケみたいになってんじゃん」(笑い)
しずちゃん「でも負けちゃった。まだ世界には届かないのを実感した」
山里「コメントがアスリートじゃんか。とりあえずそっちに集中してて。オレ、日本で南海キャンディーズ守っていくから」
これをカメラの前でやるんだから、そっちはプロだ。
試合で初めてわかる「自分に足りないもの」
ビデオを見たスタジオがやかましい。勝谷誠彦(コラムニスト)が「梅津さんは、マンガ(カウンター)をやらせるのはやめてください。もっと地道にガードを固めて」と立ち上がって型を示す。
キャスターのテリー伊藤「勝谷さん、いつも寄り目だから(爆笑)。直接言ってやって」
勝谷「でもずいぶん上手くなった」
杉山愛(プロテニス選手)が「試合で自分に足らないものが初めて見えるんですよ」と言う。本物のアスリートの言葉だ。
テリーが「他に必殺ワザはないの?」と言ったもんだから、もう大騒ぎ。たしかに、見てるとまだ本気でなぐってるように見えない。もっと実践をつまないといけないが、時間はあまりない。
勝谷「まだ8か月あるから、ワン、ツーにフックを入れたりして…」