福島の子どもが奄美大島で一番楽しかった「土砂降りの中のびしょ濡れ」

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   高い放射線量の中を生きる福島の子どもたちは、暑い夏でも帽子とメガネ、マスクに長袖シャツで通学し、外で遊ぶこともできなかった。そこでNPO「奄美大島自然体験学校」が子どもたちを招待した。カメラがそれを追った。

「ここは放射能の心配ない」

   南相馬市の小学6年生、星和波ちゃん(11)の自宅は福島第1原発から31キロ。地震のときは早退して家に1人でいた。会社員の父(37)とパートの母(33)は不在だったが、津波は道路1本先で止まった。幸運だった。

   しかし、そのあと外で遊べない日が続く。家ではマンガを繰り返し読んだり、ゲームをしたり。そんな姿に両親が「自然体験学校」を申し込んだ。NPOが全国から寄付をつのっての無料招待。参加者24人のうち20人が福島県からだった。

   奄美に着いた子どもたちに久しぶりの海があった。「去年の夏以来」「泳げるよ」という声をよそに、和波ちゃんはなお不安そう。祖父の家が津波にのまれた記憶は生々しい。可愛がっていたネコが死んだ、同じ海なのだ。

   島での2日目、船で奄美南端の加計呂麻島へ向かう。さっそく水辺へ行く子どもたち。中には着物のまま入る子もいる。和波ちゃんも穏やかな海に、やっと入った。シュ ノーケリングで海の底をのぞく。「小さな魚がいた」

   ところが3日目、大型台風9号が接近してきた。4日目に予定していた奄美本島まで舟をこいで渡る計画を1日繰り上げた。奄美伝統の「板付き舟」という手漕ぎの小舟だ。本島までの距離は6キロ。子どもたちは3班に分かれて、途中交代しながらオールを漕ぐ。全員ライフジャケットをつけ、安全のために伴走艇6隻がついた。途中の交代も問題なく、伴走艇からも声がかかる。和波ちゃんは最後の班にいた。大声援のなかを無事にゴール。

   翌日は台風のため屋内の工作などをしていたが、近くの公園でドッジボールをはじめたところへザーッと雨がきた。こどもたちはいったん雨宿りに散ったが、また雨の中へ出ていった。みんなびしょぬれで「ここでは放射能の心配がないから」「雨はやっぱり気持ちいい」

 

   帰りの空港で「何がいちばんの思い出?」と聞かれ、一人の子どもが「公園で水浸しで遊んだこと」といっていた。子どもたちが欲しいものは普通の生活なのだった。

文   ヤンヤン| 似顔絵 池田マコト
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