「東日本大震災と一緒ですね。津波と土砂崩れ・洪水とタイプは違っても被災現場を見ると同じ光景」とコメンテーターの杉尾秀哉(TBS解説・専門記者室長)。跡形もなくなった住宅、横倒しになった車や流木。えぐられた山肌や道路。台風12号は和歌山、奈良県を中心に死者・行方不明90人を超えるという甚大な被害をもたらした。
「いまは家族より災害対策」妻と長女失った那智勝浦町長
東日本大震災の時と同じように、悲劇に見舞われた自治体首長がいた。和歌山県那智勝浦町の寺本真一町長(58)。長女早希さん(24)は死亡、妻昌子さん(51)は行方不明だ。防災服で陣頭指揮に当たる町長は「まず町民のための災害対策。家族はその次」と語る。
「娘と会った時は泣かずにはおられなかった。妻も早く見つかって一緒に送れたらなあというのが今の素直な気持ちです」(寺本町長)
早希さんは濁流にさらわれたその日が結納の日だった。
「辛いでしょう」と司会のみのもんた。東京工科大学の尾崎弘之教授は「首長は住民に対して元気な姿を見せなくてはならないんですよね」と心情を思いやる。
被害甚大化に対応できてない防災行政
台風災害について、東大非常勤講師で気象予報士の河合薫がいう。
「台風は予測できる。予測できるから備えることができる唯一の災害といわれている。しかし、今回、雨が降っていることはわかっても、的確な避難勧告を出すことができなかった。そこが悔しいところ」
みの「台風の進路、予想の雨量、山や川の危険性についてもわかっていたはずでは?」
河合「わかっているはずと思うんですよ。震災の時もそうだけれど、昔と同じ方法で防災訓練を行っていた。今の防災訓練を実施し、今の防災に取り組んでいかなくてはいけない」
それはもっともだが、予測できても備えることがなぜできなかったのか。今の防災の取り組みには何が必要なのか示してもらわないとピーンとこない。河合はさらに、温暖化との関連にも触れていた。温暖化の影響で台風の発生数が増えるという説と減るという説があるが、台風が強くなるとの見方は一致している。従って、温暖化が進むとともに、甚大な被害をもたらす台風がやってくる確率は高まるという。
けさ(2011年9月6日)の朝日新聞は、今回の地滑りや土砂崩れは基盤もろとも崩れる「深層崩壊」だったと指摘している。そうしたことも含め、台風災害のメカニズムや防災面からの専門的な分析も聞きたいところだったが、もう一つ食い足りない内容だった。