警察はひとまず自浄努力注視
では、紳助の引退で、こうした黒い交際が芸能界から一掃されるのだろうか。答えは「ノー」である。今回の「事件」を見ていて、先に起きた大相撲の暴力団がらみの野球賭博問題にどこか似ている気がしてならない。あれは相撲界全体の問題だったが、今回は吉本興業という日本一のお笑い芸人を抱える会社と暴力団とのしがらみに、警察がメスを入れようとしたのではないのか。
07年、吉本興業前会長・林裕章の未亡人・林マサが新潮に告発手記を書いた。その中でマサは、漫才師・中田カウスが山口組5代目渡辺芳則会長と懇意にしていて、ことあるごとにそれをひけらかし、吉本を牛耳っていると批判した。本人はそうした関係を否定したが、その後、カウスの乗っている車が何者かに襲われるなど、不可解な事件が起きている。
美空ひばりと山口組三代目田岡一雄組長とのことを出すまでもなく、興行界とヤクザの関係は、相撲界と同様長く根深い歴史がある。吉本としては、紳助を引退させることで、これ以上警察から「吉本の芸人と暴力団との不適切な関係」を追及されるのを避けたかった。警察側はひとまず吉本の自浄努力を見た上で、今後どうするかを決める。そうとでも考えないと、この不可解な突然の引退劇の説明がつかない気がするのだが、私の邪推しすぎだろうか。横澤彪氏が生きていたら、そこのところをじっくり聞いてみたかったと残念でならない。