厚労省が東北・関東にバラ撒いた「安全デマ」パンフ―放射能心配ない

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   「サンデー毎日」で岩見隆夫が菅直人総理についてこう嘆いている。

「私もあらゆる発言の機会を捉えて、菅政治の危うさを訴え、退陣を求めてきたが、四十五年の記者生活で初めての不愉快な体験だ。首相にしてはいけない人物をしてしまったという悔いがある」

   ダメ菅への反動からだろう、小沢一郎待望の空気が少しずつではあるが広がりつつあるようだ。最近、私の知人・友人が関わった本が2冊出た。「悪党小沢一郎に仕えて」(石川知裕著・朝日新聞出版)と「角栄になれなかった男 小沢一郎全研究」(松田賢弥著・講談社)である。知人の担当編集者によれば、政治資金規正法違反で裁判中の小沢の元秘書・石川の本は、出してすぐに3刷りまでいったという。友人の松田はノンフィクション・ライター。20年以上も小沢を追及し続けている小沢の「天敵」のような男だが、彼の本も出だし好調だという。

   そうした空気を反映してか、「週刊ポスト」は巻頭で「小沢一郎よ、この『瀕死の日本』を見捨てるのか」と、おまえしか責任をとれる政治家はいないのだから、「小沢氏は『最後のご奉公』に踏み出すべきときではないか」と臆面もなくおだて上げている。古いことを持ち出すが、私が「週刊現代」の編集長のときから、ポストは親小沢で、現代は反小沢だった。ポストはそこへ先祖返りしたのだが、いまの小沢に往時の豪腕を期待するのは、ない物ねだりのように思うが。

「規制値超える食品」店頭に並んでないと大ウソ

   ところで、このところメディア関係者に会うと、ポストの報道姿勢が話題になることが多い。いまの小沢待望の論陣もそうだが、一番は年間20ミリシーベルトなんて怖くないという報道の是非についてである。私の友人でも、低線量被曝はむしろ体にいいと放射線を発するシートを敷いて寝ているのがいるが、やはり少数派である。敢えてポストがマイノリティ支持路線をとった勇気に感心はするが、部数的には苦しいであろう。

 

   煽り派の筆頭である現代は、これまではポストの批判を受け流していたが、今週はポストへの「反論」とも思われる記事を巻頭に持ってきた。「日本中枢の陰謀を暴く!『原発と放射能は安全』国民の税金でデマを流布」がそれである。中にこういう記述がある。4月始めに厚労省が300万部を刷り、福島や東北、関東地方を中心にばらまいたパンフレットがある。そこには「放射線がおなかの赤ちゃんに影響を及ぼすことは、まず、考えられません」「赤ちゃんはもちろん、小さなお子さんに対しても特別なご心配はいりません」「お子さんを外で遊ばせることについて、心配しすぎる必要はありません」と書かれている。

   「そこに書かれているのは、まさに『安全デマ』を拡散するためのもので、一部の医療関係者の間では、『悪魔のパンフレット』と呼ばれている」(週刊現代)

   また、食品の安全についても、規制値を上回った食べものは店に並ばないように国や自治体が対応していますとしている。現代でなくとも、では、なぜセシウムに汚染された牛肉が出回ってしまったのかと反論するのは当然である。

   先日、食品安全委員会は外部被ばくと内部被ばくを合わせた生涯累積線量を100ミリシーベルトにするという見解を出した。これは年間被曝量を1ミリシーベルトから、なんの根拠も示さないまま年間20ミリシーベルトに引き上げたのと同じ、無責任きわまりないやり方である。低線量被曝についてのはっきりしたデータが少ないことをいいことに、国民の命を軽んじ、弄んでいるとしか思えない。こうした怒りが、現代に追い風になっている。ポストには起死回生の切り札があるのだろうか。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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