中国高速鉄道事故の対応をめぐり国内外から批判が噴出しているなかで、中国メディアにも変化が現われている。共産党や政府の方針を伝えることが多く、党や政府のノドとか舌といわれている国営テレビの中国中央テレビで26日(2011年7月)、女性キャスターが声を詰まらせ涙ながらに異例の政府批判をしたのだ。
高速鉄道事故「発展の意味見直せ」
女性キャスターは事故について、「こんな危険なシステムがなぜ運行できるのか。発展の目的と意味を見直すことを期待したい」と話し始めた。そして、2歳の女児が救助活動を打ち切ったあとに発見されたことに触れ、「鉄道省は奇跡と言いましたけど、彼女にとって耐えられない災難です。政府の長期保障制度を期待したい」と涙を流しながら訴えた。
奥田進一・拓殖大政経学部准教授はこう話す。
「これまで無表情だったアナウンサーが、アドリブで感情表現したということは、共産党のコントロールがついに及ばなくなったということではないでしょうか。そのくらい感じてもいいくらい衝撃的事件だった。インターネット上の世論を受けて、報道スタイルを変化させている。マスコミが本来の意味のマスコミになろうとしているのでしょう」
ちょっと過大評価ではないか。はたしてアドリブなのか、本来の意味のマスコミになろうとしているのか、これだけで判断するのは早すぎる。
党中央が狙う「鉄道省に責任押しつけ」
毎日新聞論説副委員長の与良正男は「政府機関を批判するのは異例かもしれないが、彼女の判断だけではできないこと。気になるのは、(事故責任で)鉄道省をかなり強調しており、党中枢ではないというのが透けて見えません?」と慎重な見方をする。
中国事情に詳しいジャーナリストの富坂聰は、「今回、党中枢の価値観と地方政府や鉄道省とは違うことを示す必要が生じて、地方政府や鉄道省のワルを罰したいという構図が見える」という。さらに、富坂は「秋後算帳」という言葉を解説した。
「秋は祭りで、算帳は清算のこと。つまり、祭り最中は火に油を注ぐことをせず、祭りの後、世間の関心が冷めた時にもう1度、失地回復を図る中国式の動きが出てくる」
聞いていた司会のみのもんたが、「この女性キャスターも粛清されちゃうかも。1か月後に電話してみたら」