ムシロ旗を打ち振り国会へ東京電力へ攻め上れ
危険性を訴える学者の真贋も問われる時期にきていることは確かである。「週刊文春」では音楽家の坂本龍一が脱原発を訴えている。長年、環境問題に真剣に取り組んできていることは私も知っている。彼は、原発直後から「すぐに健康上の問題はない」と言い続けてきた枝野官房長官のことは全然信じていないが、脱原発の方向に転換した菅総理は、自然エネルギー普及の原動力を生み出すまで頑張ってほしいとエールを送っている。
坂本はチェルノブイリ原発事故の恐ろしさを友人から聞いて、肌で感じるようになったそうだ。「核燃料処理工場からは、通常の原発が三百六十五日で排出する放射性廃棄物が、わずか一日で排出される」という文章を読んで、「ストップ・六ヶ所」というプロジェクトを立ち上げた。
最近のものいわぬ静かな日本人へも疑問を感じていると語る。
「今は、危機の時代なんですから、国民がそんなにおとなしくしていていいはずがない。何しろ自分たちの命がかかっているんです。母親や子どもたちの命がかかっているんです。何十年も甘い汁を吸ってきた原子力村の人たちにハッキリ『ノー』を突き付ける最大の機会です。国民みんなで声を上げれば、日本のエネルギー政策を大きく変えることは絶対できます」
私の友人のノンフィクション・ライターの吉田司もこういっている。いまこそ福島の避難所にいる高齢者たちが立ち上がるときだ。30人でも40人でもいい。彼らがムシロ旗を打ち振り、福島の人々の怒りを抱いて、国会へ東京電力へ攻め上るときだ。そうすれば水俣病闘争のときのように、日本を変えられるかもしれない。
いま日本人に必要なのは、諦めではなく正しい怒りを国や東電にぶつけることであろう。