14年前の東電OL殺害事件で、東京高検が犯行現場に残された体毛と被害者の体内から検出された精液のDNAが一致したことを明らかにしたことで、この事件で無期懲役の判決が確定し服役中のゴビンダ・プラサド・マイナリ受刑者(44)の再審が注目されている。
マイナリは一審の裁判の時から犯行を否認、二審の高裁で無期懲役の有罪が言い渡された時には、傍聴席に向かって「私はやっていない」と叫んだ。
崩れた二審判決「無期懲役」の前提
この事件を冤罪として追及し続けているノンフィクション作家の佐野眞一氏はこんなマイナリの「決意」を明らかにしていた。
「再審をやり続けるならば、日本の司法当局はあなたをたぶん、生涯獄中に閉じ込める可能性がありますよと言ったら、それでもいいとゴビンダ受刑者は言うんです。自分は無罪だと、何年でも戦うと…」
今回のDNA新鑑定の結果について、検察当局は「無罪につながるような新たな証拠とは思っていない」として、再審には消極的だが、司会の羽鳥慎一は「実際にところどうなんでしょう」と元検事の田中喜代重弁護士に聞く。
「今回のDNA鑑定で、犯行時間の直前ぐらいにゴビンダではない男がいたんだろうという可能性が出てきたわけで、『ゴビンダ以外にいないという推定』で成り立っている二審の有罪判決が揺らいでいるわけです。もともと状況証拠だけの弱い事件で、私は二審でよく有罪にしたなと思ったくらいです」
刑事訴訟法の高いハードル
そこまでハッキリしているなら、再審で捜査資料や当時の状況をイチから見直したらよさそうなものだが、なかなかそうはならないらしい。
「刑事訴訟法では、再審は新しい証拠が明白に犯人じゃないと示しているときとしていて、非常にハードルが高いのですが、昭和50年の白鳥決定というのがあって、判決全体を見てちょっとおかしいなと思ったら再審やっても構わないよとゆるくなっているんです。
今回の事件では私は再審の可能性は五分五分といったところと見てます。DNAの新鑑定は受刑者が犯人ではないと決定づけるには弱いが、二審判決の根拠も揺らいでいて、再審の方向へベクトルは動き出したと思います」(田中喜代重・前出)
受刑者はすでに14年間服役している。再審開始は早いほどいい。
文
赤坂和郎| 似顔絵 池田マコト