「やせ細った牛を見たら不憫で、手近のエサをあげてしまった結果でしょうね」と司会の小倉智昭がいう。原発近くの畜産農家を訪ねたときの記憶をたどる。しかし、その牛を出荷してしまうとなると話は別だ。
福島産の牛肉から放射性セシウムが検出された。笠井信輔アナは「流通しているものは安全だという国の原則が崩れてしまった」という。出荷したときの検査は、牛の外側を計測して「安全」としたのだが、エサによる内部被曝はわからなかった。
福島原発事故後も屋外にあったエサ
7月7日(2011年)、東京食肉市場に入っている福島産の牛肉を調べたところ、11頭で基準値を上回る結果が出て大騒ぎになっている。調べると、出荷したのは南相馬市の緊急時避難準備区域の1軒の畜産農家だった。それ以前にも同じ農家から6頭が出荷されていて、これらの肉が9都道府県に流通し、一部は飲食店などですでに消費されていた。肉の流通先は北海道から四国にまで及ぶ。
6頭のうち、 静岡では、加工業者が先月10日に肉を仕入れ、静岡と牧ノ原の販売業者に卸した。 牧ノ原では4・7キロを店頭販売、9・8キロは飲食店で消費されていた。静岡では300グラムが飲食店で消費されたが、13キロは冷蔵庫で保管されていた。静岡県は保管されていた肉から、1キロあたり1998ベクレルのセシウムを検出。国の安全基準(500ベクレル)の4倍近い。静岡市民は「心配だ」「食べたらどうなるのか」「牛肉だけじゃないよ」と言う。
なぜこんなことになったか。福島県は「屋内にあったエサだけを与えるよう」農家を指導していたが、この農家はエサが足らないので、事故のとき屋外にあったワラも与えたという。その稲ワラからは1キロ当たり7万5000ベクレルの放射性セシウムが検出された。基準値の60倍だ。
これによって、ようやく風評被害から立ち直りかけていた福島の畜産はまた逆戻り。他の農産物にも波及しかねない。困った農家もあったものだ。