被災地の声伝え続ける「臨時災害FMラジオ」79・3MHz

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   防災無線は壊れ、ケータイも通じない。そんな東日本大震災の被災地で頼りになったのが、FMラジオで流れる「臨時災害放送局」だったという。甚大な災害をうけた自治体が国に免許を申請するもので、このたびは26局が開局。地震速報や、炊き出し、給水、バスの運行情報などの生活情報を伝えた。

10~30代の素人で「開局」

   コミュニティFMが臨時災害放送局にくら替えしたケースが多いそうだが、宮城県女川町の女川災害エフエム(79.3MHz)は異色だという。メンバーの多くは、地震や津波の被害を受けた現地の10~30代の若者で、放送にはまったくの素人。中心メンバーはひきこもりやニートだという。

   番組が注目したディレクターの星永諭さん。専門学校を卒業後に上京して、IT関連の派遣社員として働いていたが、体調を崩して、3年前地元に戻った。仕事を探したが見つからず、自宅の部屋に引きこもっていたという。たまに近くの店にタバコとラーメンを買いに行く生活。それが津波で破壊された。「室内で事足りてたから室内にいたつもりなんですけど、その引きこもる家がなくなってしまった」と頭を掻く。

   避難所生活にも違和感を抱いていたところ、災害FMが開局すると聞き、自分の居場所が見つかるかもしれないと応募した。そして期待は裏切られなかったようだ。「津波が来なければ、無職とか、相変わらずくさっていたと思う。いまの環境にいるうちは、自分としてはイキイキとできる」と話す。

町民討論会

   女川災害エフエムは4月下旬、被害を免れた小学校の敷地の一角、小さなプレハブ小屋で開局した。1ヶ月ほど経つと、生活情報だけでなく、町の復興を目指すため、町民のナマの声を伝えてくべきではないかといった考えが、メンバー間に広まった。町民の討論番組はどうか?

   星永さんは反対した。無用な混乱を招き、自治体側から文句を言われたりして、最悪FMの廃止につながるのではないかと懸念したのだという。保身的な態度を、自ら「ダメ人間だなあ」と自嘲する。それでも、ついには「町民のナマの声を」というメンバーの考えを受け入れた。いま、FMは町民の復興への思いを多く放送しているという。

   臨時災害放送局は通常、災害から2ヶ月程度で終了するものだが、現在も19の局が放送を続けているという。女川災害エフエムは8月下旬まで存続が決まっているが、その後は未定。コミュニティFMへの発展を目指すメンバーもいるとか。

ボンド柳生

NHKクローズアップ現代(2011年7月5日放送「密着 女川災害FMの3か月」)

文   ボンド柳生
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