大震災を契機に、自らのライフスタイルを見直して生き方を変える人が増えているという。22日(2011年6月)の夏至に「100万人のキャンドルナイト」が今年も各地で行われた。電気を消し、キャンドルの揺らめく灯りのなかで家族や友人と、被災地のことや省エネ、さらには今後の生き方などを考える時間を持った人が多かったという。
「クローズアップ現代」もスタジオの照明を全部消し、キャンドルの灯りだけという普段とは違った趣向で始まった。テーマは「新しいライフスタイル」。森本健成キャスターがキャンドルナイトの呼びかけ人の一人、枝廣淳子(環境ジャーナリスト)と経済学者の神野直彦(東大名誉教授)と語りあった。
首都圏・関西圏の4割が「暮らし方を変えたい」
電通リサーチが震災後の5月中旬、首都圏、関西圏で行った1000人調査によると、およそ4割の人が「暮らし方を変えたい」と答えたという。直接の被災を受けなかった人たちも、節電生活のなかで被災者たちの暮らしぶりに思いをはせ、生き方を変えようと考え始めたのだ。
トラックメーカーに勤務する36歳の男性は、これまで夜10時前に帰宅できないのは当たり前という仕事人間だった。それが震災後一変した。会社が節電対策で午後6時以降の残業を禁止したのがきっかけだった。1歳半になる息子の寝顔しか見られなかったのが、夜の帳がおりる前に帰宅、出迎えてくれる妻と息子に目を細める日々が続く。
「ボリュームは変わらずに時間だけ短縮するのには懸念があった。実際やってみると、いかに効率的に仕事をやるか常日頃考えさせられるようになった。変わったのは、ベースを家族に置くようになったこと。仕事もモチベーションが維持できるようになり、笑顔が増えた」
そうした変化について神野は次のように分析する。
「国民は生と死に厳しい現実である大災害を目の当たりにして、人の命や人との結びつきの大切さを自覚したのだと思う。私たちはともすれば幸福はお金で買えるという錯覚で、愛情や友情に割くべき時間をお金目当てのために削る生き方をしてきた。でも、大災害を契機に幸福な社会はもうかる社会ではないのだということにようやく気付き始めたのだと思う」