今年2011年は、国民健康保険が生まれて五十周年だという。それをお祝いして、各地で記念行事が盛大に行われた――のならよかったが、この国保もまた、この国の人々の安全・健康にまつわる多くの仕組みと同様、先行きが危ぶまれている。
もともと、会社を辞めた人、リタイヤした人など、会社の保険に入っている人より医療費がかかる傾向の人が加入する構造な上に、国全体と歩調を合わせて加入者の高齢化が進み、医療費は増大。反対に、納付率は低下しているとか。
レセプト分析で医療費削減
広島県の呉市もまた、国保の支出がこの10年ほどで150億円から260億円にふくれあがったそうな。ここまでは、いつものお話だが、同市は希有なことに、「医療費の無駄」を省くことを目指して、ユニークな取り組みを行っているという。医療機関から送られてくるレセプト(診療報酬明細書)をすべてデータベース化。レセプトの内容を分析し、いくつかの対策をはじめたのだ。
その一。患者に、ジェネリック医薬品への切り替えをすすめる手紙を送る。これは患者も薬の負担額が減るというメリットがある。これで年間1億円の削減になったという。
また、糖尿病が悪化、腎機能が低下し、透析を受けるようになると、高額な医療費がかかることがわかった。そこで、糖尿病悪化のハイリスク患者をレセプトから洗い出し、へルシーな料理強教室など、徹底した生活指導を行って、医療費の増大を予防する。
そして、もっとも議論を呼んでる感じなのは、まさしく、文字通りの「無駄な医療」を、市が判断するもの。毎日のように医者に通っている人の診療内容を検討して、受診回数を減らせそうだと判断すると、患者のお宅を直接訪問し、ご説明に及ぶ。受診をやめさせる強制力はないので、「指導」という名目だ。