東日本大震災から3か月。いっこうに対応がはかどらないものの1つが瓦礫の処理だ。瓦礫の推定量は阪神・淡路大震災の約1・7倍、被災地3県で2000万トンを超える。これまで撤去されたのは全体のわずか2割にも満たない。キャスターの国谷裕子が仙台市内から車で40分ほどの七ヶ浜町に作られている瓦礫の仮置き場からレポートした。
間もなく仮置き場満杯
「見ての通り、海から遠く離れている田畑にも瓦礫は押し流されて来ています。今でも連日、大型トラック400台分の瓦礫が運び込まれて、あらたな仮置き場も確保できないまま、周辺住民の健康問題にも影響が出ています。この瓦礫の山を解消するには何が必要なのかを現場から考えて見たいと思います」
国谷裕子はこう語りかけながら、ある旅館の窮状を伝えた。玄関先には大型の重油タンクが流れ着き、旅館1階部分はタンクから流れ出た重油やヘドロで埋まっている。経営者の村上四郎は「どこから手を付けていいのかわからない。このままでは廃業という事態に追い込まれるかも知れない」と語る。
気仙沼で40年以上もカジキマグロ漁を続けてきた漁師・佐々木夫さんは、漁場としていた海域に案内する。
「ほら、海面が濁っているでしょう。これは沈没した漁船から流れ出ている油のせいです。こんな状態がいつまで続くのか」と暗い表情で語る。
現場で分別せず「捨てるだけ」
廃棄物・建設コンサルタントの日高正人氏は、「今回の瓦礫処理は最初のボタンを掛け違っている」と指摘する。
「何でもかんでも、仮置き場に運んでしまったことが問題です。たとえば、柱などの大型木材は現場で分別をするべきでした。コンクリートなどの建材も、今後の防波堤や防潮堤の建設でリサイクルして使えたのに、他の瓦礫と一緒に運んでしまった。それが間違いのもとです」
では、今後の対処としてはどうすればいいのだろう。
「専門家や瓦礫処理に当たった経験のある人材の投入です。これまでの日本の瓦礫処理は、出てきた瓦礫をどう処分するかに重点が置かれていましたが、今回の大震災以降、社会のニーズにあった瓦礫の焼却、リサイクルにどう取り組むかというソフトウェアーが重要になるでしょう」
大震災で発生した瓦礫は、被災地全体のゴミの23年分に当たるという。地区ごとにただただ集めては捨てに行くというのでは片付かないことは明らか。復興計画に大規模な瓦礫処理プロジェクトを組み込んで、総合的、戦略的、全体的な対処が急がれる。
*NHKクローズアップ現代(2011年6月9日放送「ガレキがなくならない」)
ナオジン