1本のペットボトルが少年の命を救った。日ごろから緊急時に備え、ペットボトルを備蓄していた主婦の機転だった。和歌山県有田川町での出来事をリポーターの阿部祐二が報告した。
主婦が機転「放したらだめやで」
6月3日(2011年)午後4時ごろ、近くの小学3年生の男の子(8歳)が友だちと農業用ため池の深さを測ろう遊んでいて転落した。ため池といっても幅は広いところで100メートルはある。水深は2~3メートル。
池のすぐ近くの主婦(38)が叫び声で気付いた。見ると岸から5メートルのところで男の子が仰向けに浮いていた。主婦はすぐ家に駆け戻り、台所からペットボトルを持ち出して男の子に向けて投げたが、なかなか届かない。ようやく最後の5本目の1リットル用が男の子のお腹のあたりに落ちた。男の子はペットボトルを抱え、まるでラッコのような仕草で足をバタバタさせた。
「大丈夫。上手、上手、放したらだめやで」
主婦が声をかけ、男の子はそのまま岸に近づき助かった。
男の子は泳げないが、「ペットボトルにつかまったら、浮き上がる感じだったので助かったと思った」と元気に話す。水もあまり飲んでおらず、病院に運ばれたが、その日のうちに退院した。
文
一ツ石| 似顔絵 池田マコト