「あの時の現場は生きるか死ぬかでしたから。注入を止めていたら死ぬかもしれなかった」
海水の注入中止を求める首相官邸・東京電力本社の指示に逆らって注入を続行した福島第1原発の吉田昌郎所長がJNNの単独インタビューにこう答えた。
「1回止めると、何時間止めるのかと…」
吉田は大阪府出身の56歳。1979年に東電入社し、主に原発畑を歩み、昨年6月(2011年)に福島第1原発の所長に就任した。
あの時の注入続行は「間違っていなかったと考えているか」という質問に、吉田は「中断の話はありましたが、入れ続けないといけないと思っていました。1回止めると何時間止めるのか分からなかったので、入れ続けるしかなかった」と話す。
危機に際して、本店と現場との意識の乖離がこれほどあったとは…。杉尾秀哉(TBS解説委員室長)も「官邸と本店が机上の空論でやっていたということですよね」と言う。
そんな頼りにならない危機管理態勢のなかで、吉田は現場責任者としての思いを次のように話した。
「ていねいにやることと、いま現場でたくさんの人が働いていますから、健康や安全をちゃんと確保すること。この2点だけですよ」
文
モンブラン| 似顔絵 池田マコト