<アジャストメント>「マイノリティ・リポート」などの原作者フィリップ・K・ディックの短編小説を、「ボーン・アルティメイタム」などの脚本家ジョージ・ノルフィが映画化。近年、演技の幅を広げるマット・デイモンが主役、「プラダを着た悪魔」のエミリー・ブラントがヒロインだ。
政治家のデヴィッド(マット・デイモン)はバレリーナのエリース(エミリー・ブラント)と恋に落ちた。ところが、運命調整局と名乗る組織が運命に反する出来事だとして、2人を無理矢理別れさせる。いつまでもエリースを忘れられないデヴィッドは調整局の妨害に立ち向かいながら、定められた運命を変えようとする。
笑える「おっさん」の天使たち
原作や予告編を見てSFサスペンスを予想していたが、調整局の職員は「天使」なのに、形はおっさんだったりと笑える要素が多く、SF恋愛コメディといったところか。でも、恋愛中心の映画になってしまったため、肝心の「運命」という題材がぼやけてしまった面がある。
なかでも、「~か月後」「~年後」の繰り返しで話を急ぐ展開は、見る側の緊張感を奪ってしまい、話を進めていくために「作られている」感が拭えない。脚本家出身監督らしい作りといえるのだが、演出面は明らかに経験不足であり、役者の特色を生かせていない。デヴィッドの行動と調整局の妨害の追いかけっこというパターンが続き、話に変化がないのも面白みに欠ける。
「運命」は映画にとって永遠のテーマだけれど、安易に描くと映画そのものがぼやけ、マクロから何処へも移行せず、何を見る作品なのか解らなくなってしまう。 個人の情報が氾濫する現代だけに、調整局の個人監視は未来への漠然とした不安を感じさせた。
おススメ度☆☆
川端龍介