陸前、陸中、陸奥(むつ)の3つを合わせて言われる三陸。その三陸沖の好漁場を擁して発展してきた沿岸の町がガレキの山と化して3か月が経とうとしている。カツオ漁が始まる6月は活気づくはずが、壊滅的な打撃を受けていまどん底にある。
そんななか、宮城県石巻市では「震災前よりも強い水産業に生まれ変えさせたい」と、従来からのしがらみを断ち切り独自の再生に挑む動きが出てきた。背景にあるのは、村井嘉浩宮城県知事の「水産業復興特区」で、成功すれば震災前から高齢化、若者の漁業離れなどで衰退しつつあった水産業再生のモデルケースになるのだが、地元漁協の猛反発も表面化している。
全国一の水揚げ・気仙沼のカツオ壊滅
全国有数の水揚げを誇っていた三陸沿岸の町々を津波が襲い、多くの漁船、市場、水産加工場が飲み込まれ、被害総額は9000億円に上るという。国は地盤のかさ上げなど港湾整備に補助金を出して復旧作業に取り組んでいるが、他の支援については手が回らず遅れている。
カツオの水揚げ全国一の宮城県気仙沼港。6月になると三陸沖のカツオを追って全国から漁船が集まり活気づく。今年は絶望に近い状態だ。カツオを冷やすのに必要な製氷会社は全滅に近い。カツオ漁に欠かせない餌となるイワシが三陸沖では例年の2割しかとれない見通し。静岡県まで行ってイワシを買い付けているが、輸送代は1回で100万円の赤字になる。それでも、他の漁港に水揚げを持って行かれるのを防ぐために、背に腹を代えられないのだという。