県の許可も議会の議決も受けず、町長の専決処分で隣町のために仮設住宅をつくった岩手県住田町。5月17日(2011年)の「おでかけ前の朝刊チェック」コーナーでも取り上げたが、今朝(6月1日)は現地を訪ね今の様子を紹介した。
震災3日後「すぐ取りかかってくれ」
「温かみがあって、気持ちが和みます」
「落ち着きがありますね。ありがたいことです」
年配の入居者がしみじみ語る。プレハブ住宅とはひと味もふた味も違うすべて杉材でできた住宅だ。山あいに全部で93棟が立ち並ぶ。
住田町は震災で大きな被害を受けた陸前高田市、大船渡市、釜石市に囲まれるように位置している。海には接しておらず、津波による被害を受けずに済んだ。3月11日の地震発生時、多田欣一町長は隣町の被害を目の当たりにし、即断した。
「仮設住宅が必要だ。建設費は3億円」
震災から3日後の14日には、第3セクターの『住田住宅産業』に自ら足を運んだ。
「仮設住宅建設にすぐ取りかかってくれ」
住宅産業の佐々木一彦社長は小中学校の同級生。息は合っている。即刻、作業が始まった。
県の許可や議会の承認が必要なことは、もちろんわかっていた。だが、町長は「スピードが第一と思った。町民も議会も理解してくれると思った」
素早い対応には町長の「先見の明」があった。住田町はもともと林業の町だ。ハイチや中国・四川の地震被害を見て、町長は昨年秋ごろから木造の仮設住宅が災害時に役立つと考え、今年1月には佐々木社長に図面作りを指示していた。