北海道占冠村のトンネル内で27日(2011年5月)夜に起きた理解しがたい特急列車の脱線・火災事故。乗務員がマニュアルに固執しすぎたのだろうか、臨機応変の措置ができず、トンネル内に白煙が充満、列車は丸焼けになった。それでも死者が出なかったのは、乗客の自主判断だった。
「指示ないから自分たちで逃げた」(乗客)
一夜明けた28日、トンネル内から運び出された車体は、鮮やかなブルー色だった前部は茶色に焼焦げ、窓ガラスは焼け落ち、車体が熱で弓なりに変形、事故のすごさを物語っていた。
事故が起きた列車は、釧路発札幌行きディーゼル特急「スーパーおおぞら14号」(6両編成)。27日午後9時55分ごろ、トンネル(全長685m)のほぼ中央にさしかかったところで異常音がして止まった。乗っていた240人の乗客は乗務員の避難指示を待ったが、いっこうに指示がないうちに白煙が押し寄せてきたという。煙のススで顔を真っ黒にした男性乗客が当時の模様を次のように語った。
「最初、バンバンと小さな石を跳ね上げるような音が1分ぐらい続いた後に止まりました。すぐに後ろの3両の車両から乗客が『火の手が上がっている』と前の車両に移動してきて、乗務員の指示を待っていたんですが、一向に避難指示はないし、白煙が後ろの車両から押し寄せ、咳き込む人も増えてきたんです。このままでは死ぬしかないと判断して、皆さんが順次、車両から脱出しました。
でも、トンネル内は全部真っ白になっていて、伸ばした手の先ぐらいしか見えない。ライトを持っている人が照らしながら、その光だけを頼りに前へ前へと逃げる感じでした」
その間に乗務員たちは何をしていたのだろう。JR北海道の広報によると、脱線や火災が発生した状況を把握できず、トンネルの出口がどこなのか確認のため車両から降りて探しに行ったという。
脱線はともかく、火災発生は煙が出ているのですぐわかったはず。出口は確認するまでもなく、線路伝いに進めば出られることは分かりそうなもの。乗務員が車両から離れて戻るまで20分もあったというから呆れる。
文
モンブラン| 似顔絵 池田マコト