自転車が空前のブームだという。駐輪場や自転車専用レーンがきちんと整備されたわけでも、自転車のマナーが良くなったわけでも、国が後押しする長期戦略があるわけでもない。それなのに自転車で通勤する「自転車ツーキニスト」と呼ばれる人たちが急増している。
ひと足早く自転車ブームを迎えた欧州では、国家戦略として自転車の利用を促進し、次々と「自転車都市」が誕生している。自転車専用の「サイクルスーパーハイウェイ」の建設を進めている国すらある。日本とはどこがどう違うのか。
震災の交通マヒが後押し
都内の広告会社に勤める男性は毎日15キロの道のりを40分かけて自転車で通う自転車ツーキニストだ。きっかけは8年前。運動不足がたたって体重が80kgに増えてしまった。一念発起して自転車通勤に切り替え、わずか1年足らずで8kgも減量できたという。
健康にいい、環境にいい、カッコいい。そんなムード的なものが空前といわれる自転車ブームの背景にあるという。震災による交通マヒが自転車ツーキニストを後押しし、ブームに拍車をかけたという。
ところが、東京は自転車専用道路が整備されているわけではないし、ルールがきちっと確立されているわけでもない。前出のツーキニストの男性が、都心の主要幹線をトラックやバスの隙間を縫うようにして走りぬける様は見ている方がヒヤヒヤする。