認知症学会が進める「ニコニコリハビリ」
昨年の日本認知症学会で脳のメカニズムの研究が注目された。記憶をつかさどる海馬の萎縮はわかっているが、目から入る表情などの認識能力は残り、感情にもつながるというものだった。
カギは表情だ。さまざまな表情を見せて認識する度合いを調べると、笑顔がいちばんとわかった。自分の子どももわからない人でも、わずかな笑みは認識する。ここから残された能力を生かそうという試みが行われている。「ニコニコリハビリ」という。
顔の表情(にらめっこなどで表情を鍛える)、視線(目を合わせる)、ジェスチャー(動作の物真似)を組み合わせた訓練を、週2回4週間というプログラムで、劇的な効果をあげているという。番組では90歳の女性に笑顔が戻った例が紹介された。
群馬大の山口晴保教授は「言動を否定しない」「褒める(やる気が出てくる)」「役割を与える(生き甲斐になる)」の3つをあげる。
「ささいなひと言が自信につながる。歳をとるだけで不安と孤独感は増す。だから、大事なんだよという接し方が必要。褒めたら褒めた人もいい気持ちになれる」
番組を見ながら、なかば認知症だった父母のことがしきりに浮かんだ。たしかに叱ってばかりいた。つらかったのだろうな。「そういういい方はよくないよ」という母の声が耳に残る。さて次は自分の番か。
ヤンヤン
*NHKクローズアップ現代(2011年5月16日放送「私を叱らないで~脳科学で認知症ケアが変わる~」)