自治体の財政難や市町村合併に伴って、全国各地で文化財が展示も適切な管理もされないまま行き場を失うケースが急増している。博物館の閉館が相次いでいるためだ。キャスターの国谷裕子は「それぞれの地方の宝である文化財が姿を消しています。その地方でしかできないもの、作れないものが失われつつあり、これからの日本の文化はどこに向かって進むのでしょうか」と提起する。
5000点以上の文化財を保有したまま閉館した石川県輪島市の民俗資料館。職員は「財政難でのやむを得ない措置だった」と話す。3年前に無期限休館に追い込まれた滋賀県の琵琶湖文化館は、国宝や国の重要文化財を合わせて2100点保有し、点数の多さで全国第6位の博物館となっていた。年間約2万6000人の来館者があったが、ここも財政難で無期限休館に追い込まれた。文化財の管理を担当している井上ひろ美学芸員は、「皆さんに文化財を見せられなくなって申し訳ないという思いでいっぱいです」と苦渋の表情だ。
博物館の閉館が相次ぐ一方で、寺などが後継者難や地域の過疎化で、文化財を盗難などから守れないと博物館に寄贈・寄託する動きも広がっている。滋賀県栗東市にある金勝寺は3年前に12体あった仏像のうち5体が盗まれ、住職の勝山圓昭氏は「博物館などに預けられないとなると文化財の危機だ。民間ではこれ以上維持できない。なんとか手立てを考えて欲しい」と窮状を訴える。
自治体も文化予算に手が回らない
九州国立博物館館長の三輪嘉禄六はこう話す。
「地方にある文化財はその地域のアイデンティティーの象徴。文化財の活用方法にもっと知恵を絞るべきだ。昔は日常生活の中に文化財が溶け込んでいた。ワクワクドキドキするようなことがまだまだできると思う」
国谷「カギを握るのはやはり博物館になりますか」
三輪「主役は市民です。市民参加でこれからの文化財保護を考えていく必要があります」
しかし、自治体も文化予算を確保できない現実がある。国谷は「博物館や資料館などをこれからどう支えていくのか。新たな博物館のあり方を模索するなども考えて見るべきでしょう」と結んだ。ヨーロッパの古い町などはどうしているのか。そのあたりの報告も聞きたかった。
ナオジン
*NHKクローズアップ現代(2011年5月12日放送「どう守る『地域の宝』文化財」)