みんなで故郷に帰りたい…「福島・浪江町」迫る消滅の現実味

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   あくまで故郷にこだわるのか捨てるか―。震災から2か月、収束のメドが全く立たない福島第1原発事故がもたらしたレベル7という深刻な事態に、周辺住民たちの心が揺れている。

   「クローズアップ現代」はそうしたなかで最も苦しめられている、原発から半径20km圏の警戒区域内で暮らしていた浪江町の住民たちを取り上げた。そこで見えてきたのは、町はいったいどこにいってしまうのかという過酷な現実だった。

すでに県外避難の町民6割が所在不明

   警戒区域内で暮らしていた9市町村7万8000人の住民は、もはや勝手に家へ帰ることもままならない。このうち、最も放射線量の高いことが分かった浪江町の住民は、町全体が避難対象となり、町役場を含め生活の基盤を完全に失った。元に戻るには、原発事故が収束して放射線の積算が地域住民の健康に悪影響を及ぼさないことが確認される必要がある。しかし、東京電力は原発の核燃料棒が100℃以下の停止状態になるには半世紀以上かかると発表しており、家に戻る希望を早くも絶たれた感じだ。

   福島県外に避難し、町役場が所在確認のできない住民は人口の6割超に達することも分かった。バラバラになった「町」は、このままでは町再興を担ってくれる若者が戻らず消滅しかねない。そんな強い危機感が町民の間に広がっている。

   津波で帰る家を失った浪江町長の馬場有や安否確認担当の渡邉文星は、福島県二本松市に開設した臨時役場で1か月以上も寝泊まりする生活を続けている。夕食時に出るのは帰れない故郷の話。この日も馬場からこんな話が出た。

「夜桜祭りは明日だな。花火がドーンと上がる様を花びらの間から見るのはきれいだよ」

   町には町民が誇りにしている伝統の祭り「安波(あんぱ)祭」(海の安全を祈願する漁港の祭り)や鮭が返ってくる清流「請戸(うけど)川」、太麺が人気の「なみえ焼きそば」がある。でも、元気な浪江町があればこその祭りであり、焼きそばだ。

   住民たちの心を繋ぎ止めようと浪江町商工会青年部の若者たちが奮起し、二本松の避難所で「なみえ焼きそば」をふるまうイベントを開いた。若者の心意気は大いに買うが、太麺の1本、1本が一条の光となって住民の心を繋ぎとめられるかどうか。

文   モンブラン
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