福島第1原発から20キロ以内の「警戒区域」への一時帰宅がきのう(2011年5月10日) から行われている。54世帯92人 が参加したが、滞在はわずか2時間。懸念された被曝は除染者ゼロ。防護服に 「オーバーだよ」の声が出ている。
2時間では家畜やペットのえさやり
きのう(10日)の帰宅は川内村の住民。同じ村内だが、20キロライン外にある村民体育センターに集合したあと、防護服、線量計、トランシーバーなどで身をかためてバスに分乗してそれぞれの自宅 へ向かった。
持ち出せるものは70×70cmのビニール袋に納まるものだけだから、預金通帳とか住所録、位牌、アルバムとかに限られる。多くは残してきた家畜やペットの様子を確認、エサやりが目的だった。
村内の様子はいつもと変わらない。ただ、家の中は地震で物が倒れたりしたまま。 動物たちもなんとか生きていたが、防護服の飼い主を見て逃げ出す羊の姿もあった。ペットはこの日は連れ出せなかったが、追って村の手で避難先へ届けられるという。
「もっと細かく測定して欲しい」
この様子を避難先で見ていた田村市の人たちは複雑な表情だった。やがて自分たちも帰宅の順番が来る。
「4月21日 まで自由に出入りできたのに」
「(防護服に)あれじゃ無理だよ」
坪井幸一さん(62)の自宅は田村市だが、20キロラインから500メートル内側にある。
「あんな武装する必要あるのか。20キロにカベがあるのか。もっと細かく測定すべきだ」
という。2か月前まで、30年間原発の変電関係で働いていた。
「複雑ですよ。恩恵は受けていたが、それがこの被害だ」
帰宅は拒否するという。
現地でレポートした黒宮千香子が「大きな袋でペットフードを持っていく人もあった」というと、司会の羽鳥慎一が「2か月間何も食べてないの?」だと。それじゃ生きてるわけないだろ。
帰宅した箭内正男さん(48) がスタジオからの電話に答えた。
「(家は)前に1度帰ったときのままだった」
ネコも無事で、写真にも撮ってきた。そこで疑問だ。
「バス降りる前に被曝放射線量を測ったが、家に戻れない線量じゃなかった」
「いつになったら帰れるのか。我慢するしかない」
決まっているのは、明日、川内村の50世帯と葛尾村の18世帯。あとはまだ未定だ。一時帰宅が進むにつれて、本帰宅を求める声が高まりそうな気配である。