大震災と原発事故の影響で帰国する外国人が多い中、日本に残って頑張っている人もいる。イギリス人のリチャード・ハルバーシュタットさん(45)もそのひとり。宮城県石巻市に来て18年の石巻専修大学理工学部の准教授だ。
石巻の惨状に「逃げるのは卑怯だ。引き返そう」
震災発生後、駐日大使館から避難指示を受けた。悩んだ末にいったんは帰国を決意したが、仙台で1泊したとき、変わり果てた石巻の姿をテレビで見て気持ちが変わった。瓦礫の中でひとりのおばあさんが笑っていた。彼女は言った。
「何もかもなくしてしまったから、笑うしかない」
その画面を見て思った。
「このまま見捨てることはできない。逃げていくのは卑怯だ」
翌日、石巻に引き返した。石巻の友人たちはみんなびっくりして「この馬鹿」と言って涙で迎えてくれた。飲み仲間は「ただの呑兵衛じゃなかったね」
悲しいことがある。ひとりの親友を亡くしたことだ。青年会議所で一緒に町作りに取り組んでいた先輩だ。その遺志を継いで、石巻を「おいしい海の幸を提供できる日本一の寿司の町にすること」が目標という。
司会のみのもんたがスタジオから電話する。
みの「帰国しなかったいちばんの理由はなんですか」
リチャード「石巻の仲間たちと離れたくない気持ちが強かったからです」
みの「イギリスの人たちはなんと言いましたか」
リチャード「残った理由を説明するとわかってくれました」
みの「石巻のどこが好きなんですか」
リチャード「人です。人が最高です」
みの「これからなにをするつもりですか」
リチャード「復興の手伝いをしたいと思っています」
みの「日本はもう一度、立ち直ることはできますか」
リチャード「それは間違いなくできます。大丈夫です。強い人がいっぱいいます」
流暢な日本語。おだやか表情。すっかり石巻にとけ込んでいる様子だ。
家もパスポートもなくしても避難所でタイ式マッサージ
岩手県大槌町の吉里吉里地区でマッサージのボランティアに精を出しているタイ出身の平野ニコンさん(45)も取り上げた。震災で家もパスポートもなくしたが、専門学校で習得したタイ古式マッサージの技術を持っていて、避難所で暮らすお年寄りたちの身体と心をいやしている。
おばあさんやおじいさんたちが「最高だぁ」「楽になった」と喜んでくれるのが何よりの報酬だ。「吉里吉里の人はみんなやさしい。今度は私が助けたい」。日本語は少したどたどしいが、思いは通じ合う。
日本人以上に日本を愛するこうした人たちの気持ちが被災地の人たちを勇気付けている。