「できる限りのことをさせていただきます。申しわけありません」と消え入るような声で土下座するかと思えば、「日本中のすべての焼き肉屋さんと同じものを使用していましたが、何らかの不備があってこのような事態を起こしました」と叫ぶように話したり、なにやら顔が2つあるような…。
父親が駐車場、母親が厨房
「ユッケ」の集団食中毒を起こした「焼肉酒家えびす」チェーンを経営するフーズ・フォーラスの勘坂康弘社長(42)は、創業10年余で年商18億円を達成した若きカリスマ経営者だった。
富山県高岡市の生まれ育ち。金沢の大学へ進み、ディスコでアルバイトしたのが外食を起業する決め手になったという。2年半の派遣社員で1000万円をため、1997年に高岡市に1号店を開いた。ただ、初めはいまのような安売り路線ではなく、内装もおしゃれで、非日常を演出していたという。当時は父親が駐車場、母親が厨房におり、家族でやっていた。夢は「日本一のレストランチェーン」だったそうだ。
その後、低価格路線に転じ、2017年の東証一部上場、2020年に300店舗を目指してまっしぐらだった。ユッケ用の肉の仕入れ先を問題の「大和屋」(東京都)にしたのは2年前。よりやすい肉を仕入れるためだった。その後の2年間で店舗数は20店舗になった。
しかし、以前は自主的に行っていた肉の細菌検査をやらなくなっていった。勘坂社長は「たしかに認識の甘さがあったと思います」と言うが、その結果の死者4人である。
文
ヤンヤン| 似顔絵 池田マコト