文科省は今月初め、原発からの放射性物質の広がりを予測する「SPEEDI」と呼ばれるシステムの予測値を公表した。気象条件や地形などをもとに割り出 し、住民避難などの判断のもとにもなるものだ。30年前から約117億円をかけて開発されていたのだが、なぜか必要な時期にデータが出てこず、公表は50日もたってからだった。細野豪志・首相補佐官は「公開が遅くなったのをお詫びしなければならない」と弁明したが、後の祭りだ。
予測合っていたのに「混乱招く」と公表せず
データは5000枚。事故直後からの経緯を連続させると、汚染の広がり(予測)がわかる。これは実際の結果に近く、飯館村などへの偏りもよく出ている。
本来、事故から15分後にはデータが出せるはずだったが、装置や福島との回線が故障、また放射性物質の排出量など排出源情報が得られず、仮定に基づく予測しか出せなかったため、「無用な混乱を招く」として公表しなかったという。
しかし、原子力安全委員会の元委員の住田健二・阪大名誉教授は「何十年、何百年に1 度という事態のために作ってきたものだ。予測であると断って公表すべきだった」という。地域による汚染の濃淡がわかり、一律半径何キロという規制よりはきめ細かな対応もできたはず。
永吉真美・ANN原発デスクが解説した。「当初全く機能せず、3月24日になって初めて公開された」と出した図を見ると、広がりははっきりと北西の飯館村の方向へ向かっていた。これが可能になったのは、近くで放射量が 計測できるようになったからだという。シミュレーションは、あらゆる可能性を出すので、現実とは違うものもあり、細野補佐官も「当時はパニックを恐れたのだろう」と言っている。ここが議論のわかれるところだ。