九州新幹線が全面開通したのに、東日本大震災の翌日(2011年3月12日)だったためにほとんど話題にならなかった。テレビ向けCMもお蔵入りになってしまったが、インターネットで人気となっている。
このCMにJR九州はずいぶんと力を入れていた。テーマは「九州は一つ」で、沿線各地の人たちにウェーブをしてもらい新幹線の車両からそれを撮影。九州7県を表すのに、虹の7色を使って特別車両をしつらえ、鹿児島中央駅から博多までの沿線住民にホームページで参加を呼びかけた。撮影が行われたた2月20日には1万人以上が集まったという。
257キロの沿線に集まった1万人出演
そのノーカット180秒バージョン――。特別列車が鹿児島中央駅をゆっくりと離れ、スピードを落として走る車窓から映し出された光景は、マンションのベランダ、ビルの屋上、歩道橋、球磨川だろうか小舟の上から、色とりどりの思い思いの格好で手に持った旗を振ったり両手を振る人の波が延々と続く。ウエディングドレスを着た新婚ホヤホヤのカップルや孫をおんぶして走るおばあちゃんもいる、喜びがそのまま伝わってくる。こうして3分間の鹿児島中央駅から博多駅まで全長257kmの楽しい旅は終わった。
大震災で3日で放送中止
しかし、このCMが放送されたのは3月9日から震災日の11日までのわずか3日間。そこでJR九州がホームページでこのCMを流したところ大反響が起きた。約80万件のアクセスがあり、「You Tube」には被災地からの書き込みも相次いだ。
「福島県民です。私たちも今より元気になって、虹色の新幹線に大きく手を振りたいと思います」
「被災地にもこのように人々が嬉々として元気あふれる将来が来ると確信しています。元気にしてくれる、元気な九州の人々にありがとうございます」
制作したJR九州の関係者も、「今回の企画は間違っていなかったなという思いで、感無量です」という。
スタジオではキャスターのテリー伊藤が感激して、「もっと見ていたかった。50分バージョンもあるみたいなので、DVDでやればいい」と話す。
「You Tube」には「鹿児島中央駅から新青森間バージョンも見てみたい」というコメントも寄せられたという。まだ被災地で寸断している新幹線が1本で結ばれるのは、仙台~一ノ関間の運転再開が予定される今月30日(2011年4月)になる。