震災から5週間以上たったいまも、ガレキの下に埋まっているのか海に流されたのか、1万3864人(2011年4月18日現在)の行方が分かっていない。
そのガレキの中で黙々と行方不明者を捜す一人の消防団員がいる。
「被害にあった人たちとか家族の人たちそっちのけにして、自分たちだけ、なんて考えている人いないから」
今回の震災を通して、被災者の人たちから教えられることが多い。なかでも目を見張るのは、しばしば見られた「皆のために」という純粋で高度の『公』の感覚。この消防団員もその一人だ。
消防車で救助に向かい大津波
岩手県大槌町の小国隆(43)。漁業を営む地元の消防団員だ。地震発生時、小国はすぐに消防団の詰め所に駆け付け、仲間6人で消防車に飛び乗り海岸沿いの民家の救助に向かった。そこへ津波が襲ってきた。消防車ごと津波に巻き込まれる。この時、小国は「助けてくれ」「大丈夫か」という仲間の声を聞いたという。
気付いたら2キロも離れた場所のガードレールに足が引っかかっていた。自力ではい出たところへ、運よく救急隊員が来て助けられた。
仲間5人のうち3人が死亡、2人がいまだに行方不明だ。小国は「私と運転を代わったばかりの仲間が、ハンドルを握ったまま津波にのみこまれた」と悔しそうに話す。
「毎晩、死んだ人が夢に出てくる」
現在、自衛隊が重機でガレキを排除しながら行方不明者の捜索を行っている。当初、行方不明者の捜索をしていた地元の消防団員は、被災地への物資を届ける作業に取り組んでいる。
小国は午前中に物資輸送に従事したあと、午後は仲間や行方不明者の捜索に出かける。「(ガレキは)何軒もの家がプレスされた状態だから、よく見てやんないと」という。
家族は「危険だから」と消防団員をやめるよう言うが、小国は「行方不明者の捜索とかガレキの撤去が終わらない限りは、本業の漁業はできない」と突っぱねている。そして次のように言った。
「毎晩、津波関連の夢のオンパレード。死んだ人出てくる。ハッと目が覚めると、寝床について2時間しか経っていない。眠りが浅いのだろう。オレでさえそうだから子供たちはもっとじゃないですか。
(ここでは)被災者の人たちとか家族の人たちをそっちのけにして、自分たちだけなんて考えている人はいないから」
地元有志の集まり
スタジオでは、まず司会の加藤浩次が口火を切って、「消防団員って、地元の有志で集まり。住民を逃がすために最後までいて助からなかったということを忘れてはいけないですね」と話し出した。
香山リカ(精神科医)「最近は自己中心的になったと言われていますけど、震災でこういう方とか、殉職した警察官、患者を救おうとして亡くなられた医師とかがたくさんいた。私たちにとって希望でもあるが、こういう方たちが一番辛い思いをしている」
キャスターのテリー伊藤「(今回の震災で)人に対する優しさみたいなことを覚えたのは唯一の光。若い人で感じた人がたくさんいる」
消防団員の被災者は、岩手県が死者53人・行方不明61人、宮城県は死者61人・行方不明24人、福島県が死者16人という。