政府はわかりにくい言葉を使う。昨日(2011年4月11日)、枝野幸男官房長官は福島第1原発から半径20キロ圏外の一部地域を新たに「計画的避難区域」に指定すると発表した。
東京電力の「計画停電」は「無計画停電」ではないかと揶揄されたが、今回の政府の発表も地元との十分な協議なく行われたといい、他人事のようの響くこの「計画的避難区域」の決定も、どこまで計画的だったのか不満の声が強い。
「牛を置いていかざるを得ない」
枝野長官によると、20キロ圏外でも累積放射線量が年間20ミリシーベルトに達する恐れがある区域では、1か月をめどに計画的に避難してもらうというものだ。対象となるのは、福島県葛尾村、浪江町、飯舘村と南相馬市の一部と川俣町の一部。
飯舘村の菅野典雄村長は「聞きなれない言葉で、どういうことかと思いましたが、基本は全村民避難してくださいということです。私としては納得できません。村にある程度の基盤を置きながら、村民の健康、生命を守る方法もあるのではないかと国に伝えました」と怒りを隠せない。
避難するにもどこへ避難するのか。村民の間でも戸惑いが広がっている。説明会ではこんな声も出た。
「この村捨てて、お前ら、降参して逃げて行けという話だな。そりゃ、駄目だ」
酪農家の1人は「計画避難が強制となれば、牛を置いていかざるを得ない。かわいそうだが、割り切るしかない」と苦しい思いを打ち明ける。
追い返された東電社長
コメンテーターの杉尾秀哉(TBS解説・専門記者室長)は「最初は半径20キロ、30キロで区切りましたが、同じ20キロ圏でも風向きや地形など場所によって放射線量が違う。その実態に合わせて範囲を変えようということだが、これぐらいならこれぐらいのリスクがあるとちゃんと根拠を示して説明しないといけない」と指摘する。
震災発生から1か月の4月11日、東電の清水正孝社長が初めて福島県を訪れたが、佐藤雄平県知事との面会すらできなかった。報道陣からは「県民の怒りは届いているのですか」「県民の声を直接聞こうとしないのですか」と厳しい質問が飛んだ。1か月たっても、まだ何の区切りもついていない。