放射能デマより深刻な「自粛不況」
東日本大震災から1か月近くが経とうとしているが、週刊誌には2つの流れが出てきている。現代のように、原発事故を深刻で悲観的に見る流れと、軽んじてはいけないが、あまり深刻になって「自粛不況」をさらに深めてはいけないというスタンスのポストや新潮だ。
ポストは先に触れたように、放射能差別を起こしてはいけないとして、新聞や一部の週刊誌などのように、これでもかと最悪の事態を予測してみせるのは、科学的根拠を無視した、あるいは理解の浅い記者が「結果ありき」で書いたものだと断じる。そして、福島原発ではすでに部分的なメルトダウンが起きているが、それはすぐに再臨界につながるものではない。
ネット上でも多くの流言飛語が飛び交っているが、原発が多い「福島や、新潟、福井などで先天性異常や白血病、がんの発生率が特に高いというデータは、いかなる調査・研究でも全く見られない」と明言する。
また、「福島県いわき市は通常の数倍から数十倍の放射線量が観測されているが、この値がずっと続いたとしても、年間被曝量は5~6ミリシーベルトである。世界にはいくらでもある自然放射線と同じレベルだ。(中略)いずれもトラックやタクシーで福島県内に入ることが危険なレベルではない」と続け、「放射線汚染の広がりより、放射能デマの広がりのほうが深刻さを増している」と結んでいるが、頷ける主張である。
新潮は「あなたが子供だった時、東京の『放射能』は1万倍!」で、米ソが挙って大気圏内核実験をしていた時代に、「凄かったのは60年代前半で、日本人の体内セシウム137の量が大幅に増えたことも確認されています」(神戸市立工業高専の一瀬昌嗣准教授)と、私の若い頃さかんにいわれた、黒い雨に気をつけろというキャンペーンを思い出させてくれた。
また、「私がこれまで原水爆実験国を調査してきた結果、日本に一番悪影響を及ぼしたのは、東京オリンピックから文化大革命にかけて中国で行われた核実験です」(札幌医科大学高田純教授)。その中国が日本の放射能による汚染に怯えている。