町に残る友達に罪悪感
冨永良喜・兵庫教育大学教授は「母の話をしないでというのは回復の一歩なんです。家族の温かさでそれを受け止めてやること。怖い夢を見るというのもある。家族に言えればいいが、言わずにいると長引く」という。
阪神淡路大震災を経験した兵庫県震災・学校支援チームの瀧ノ内秀都さんは、「離れていく子は残る子に対して罪悪感を持つ。阪神のときは離れた子の声を残った子に伝えた。教師は素直な気持ちを出せばいい。子どもも『いつもの学校、いつもの先生がいちばん』と言っていた。3年生だったその子は、いま先生をしてます」と話す。
岩手、宮城、福島で291校が新学期を再開できずにいる。避難所になっていたり、一切を津波に流されていたり、転出者が多くてクラス編成ができなかったり…。なかには、別の学校へ移って再開するところもある。宮城・山元町の中浜小学校は、隣の学校へそっくり移る。そこで中浜小の思い出を歌にした。「ひとりの人間はとても弱いけれど、みんなが、みんなが集まれば、強くなる」
「ボランティアの人に『先生、休んだら。休んでいいよ』と言われたことがある。今回も東松島ですすめました。休むと元の気持ちになれる。子どもが元気になれば、大人も元気になれる」(瀧ノ内秀都さん=前出)
あらためて、いかに多くの知恵と愛情が子どもたちにそそがれているかを感ずる。母を語らぬ小学生、「離れる覚悟」と話す中学生。温かく受け止める家族、教師あればこそ、明日が開けるのだろう。
ヤンヤン
*NHKクローズアップ現代(2011年4月4日放送「どう支える 被災地の子どもたち」)