いまだ携帯電話も加入電話も通じず、外部との連絡が断たれている地区もらある岩手県釜石市。ようやく郵便業務が再開され、唯一の通信手段が繋がった。
被災者の心を繋ぐ大役を担う郵便配達員の一人、19歳の鳥屋部絢香さんは、「できるだけ早く便りを届けるために本人に直接手渡したい」という。
日本郵便の釜石支店は震災で業務ができない状態になった。1週間後の18日(2011年3月)にスーパーの空いたスペースを借りて仮店舗の開設準備に取り組み、ようやく再開にこぎつけた。
1通でも多く届けたい
鳥屋部さんの家族は幸い無事だったが、いまだに家族の安否が分からない同僚もいるという。そんな中で鳥屋部さんはこう話す。
「最初は自分も被災地の住民なので、被災者の感覚で配達していたが、今は釜石の復興のために、1通でも多く郵便を配達することだと思っています。まだ電話が通じていない所もあり、安否の確認ができたり、お互いに状態を知ることができるので役に立っているかな」
鳥谷部さんが郵便物を直接本人に手渡すのには、もう一つ理由がある。届け先には避難所で生活するお年寄りが多い。本人の顔色を見て、健康状態を聞くのだという。
司会の加藤浩次が驚いた表情で「孤立しているんですね」と呑気な一声。これにコメンテーターのロバート・キャンベル(東大教授)は、「彼女は最初は被害者の感覚で配っていたが、やがて復興のためにという気持ちになったと話していて、その場にかかわっている人の強い言葉を感じ印象的だった」と感想を述べた。
被災者たちが茫然、混沌とした気持から立ち直り、ようやく復興へ向けて動き始めているのが伝わってくる。
文
モンブラン| 似顔絵 池田マコト