福島原発の「風評被害」は深刻だ。ただ、一口に「根拠のない風評」と言っても、その中身はいろいろある。福島原発は収束の見通しもないまま、風評、風評といってる間に、庶民間の風評が現実になってきた。
東電・政府は何か隠しているという疑心暗鬼
筆者の暮らす東京では、東電や政府は放射能についてなにか隠しているのではないか、ウソをついているのではないか、あるいは意図的でなくても、漏れや誤りがないか、それにしても今後(事態が悪化したら)いったいどれだけ被曝することになるのかといった不安を口にする人が、知る限り、増えてきた。最近はテレビのワイド番組コメンテイターなども、とくにタレント系はそうした怖れを口に出すようになってきた。政府や放射線専門家の懸命の喧伝も、だんだんと効果が薄れだしてきたようだ。
税関で物品通りにくい
で、そんなときどうするか。外国人のように簡単に東京や日本を脱出することはかなわないので、とにかく少量でも放射能は避けようと、最大限、努力して自衛する人が少なくないようだ。スーパーからペット水は消え、北関東および関東沿岸の産物が激減した。食堂に行くと、気のせいか出された水を飲む人がいないように見受けられる、といった具合だ。
そして、日本人が放射能を避けようとする様子を俯瞰して見ると、海外は日本と日本人の放射能をより慎重に「保守的に」避けようとしている。番組によると、香港の日本料理店では、客の要望で食材の放射能検査をするようになったとか。日本の物品が税関を通りにくくなり、空港では日本人に放射能検査が行われる。「なんか日本人・放射能差別みたいなことが起こっちゃってるんですよね」(司会の小倉智昭)。
もっとも、日本人自体が福島原発とその放射能が怖くてたまらないのだから、「(放射能差別が)悔しい。イヤ!」(南野陽子)とか、風評被害をやめてくれと言ってみたところで、世界を説得する根拠に欠けるだろう。