福島原発から約100キロ北にある宮城県・女川原発は、大津波を受けながら想定通り停止した。壊滅した近隣集落の住民240人がいま体育館に避難していて、発電所が食事を提供しているという。何が違ったのか。
津波の高さ、防波堤はほぼ同じだったが…
女川も震度は6弱で、原子炉は安全に停止した。ここまでは福島も同じだ。津波の高さも福島原発と同じ14メートルだったが、女川は波高より高いところにあったため、原子炉、発電施設に重大な被害はなかった。
福島原発で想定されていた津波は5・7メートル、防波堤は5・5メートル、施設は海面から10メートルの所に建てられている。女川原発は津波9・1メートル、防波堤5メートル、発電施設14・8メートルだった。重大な原発事故を免れたのは4メートルの差だったわけだ。
専門家は女川は津波を想定して設計されていたという。これに対して、原子力安全委員会で福島原発の耐震基準の作成に携わった委員は、「安全に過信があったのではないか。想定が不十分であっても、多重防護システムでリスクを回避できないといけない。それが原子力発電所の設計思想だ」という。
安全委員会が2006年に出した地震に対する指針には津波対策は含まれていなかった。「中間報告は揺れに関するもの。津波はこれからというところだったが、その前にきてしまった。痛恨の極み」と委員はいう。
文
ヤンヤン| 似顔絵 池田マコト