中高年被災者の「心の復興」張っている気持ちが切れたとき…

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   自らが家族や家を失い、厳しい避難生活を送っているにもかかわらず、冷静さを保ち、他の被災者を思いやる。東北の人たちの落ち着いた対応が外国メディアで称賛されているが、被災地支援に現地を訪れたアルピニストの野口健は、「東北の人は自分の感情を押し殺しているようだ。それが刃になって自分に向かっていかないか。もっと感情を出したほうがいい」と東北の心を気遣う。

すべて失って始まる一人の生活

   精神科医の香山リカもこう心配する。

「現地の精神科医の話も聞いているが、患者は自分の苦しみより、『先生、生きていて良かったね』と医師のことを心配してくれるといっていた。いまは気を張って頑張っているが、この先、少しずつ、すべてを失ってしまった、という感情が出てきたときのケアが重要だ」

   キャスターのテリー伊藤が聞く。

「若い人はもう一度頑張ろうという気持ちになれるが、年配の人はどういう風にこれから生きていけばいいのか」

   たしかに、なにもかも失ってしまった中高年者の心のケアはこれから重要なテーマだ。

   香山「助かった自分の命に感謝して、犠牲になったひとのためにも生きていこうという前向きなところもあるが、仮設住宅などに入って、それぞれ1人1人の生活が始まった時、どうやってサポートしていくか」

   香山の答えはいま一つはっきりしないが、町や村の復興まではまだまだ長い道のりだが、個々の被災者の心の復興にはさらに時間が必要だろう。

   そんな中、被災地の人々を勇気づけたのが選抜高校野球の東北高校。練習もままならなったが、全力で食い下がった。地元は段ボールに「がんばれ、東北!」と書いて応援した。「気持ちのこもったプレーだった。最後まであきらめずに戦った姿は感動的だった」と町内会長。

   地元に元気を与えたいと臨んだ甲子園。敗れはしたが、選手たちの思いは伝わった。

文   一ツ石| 似顔絵 池田マコト
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