注水と排水という相反する作業だ。原子炉を冷やすためには水を入れ続けなければならないが、水を入れると高濃度の放射能に汚染された水が増え、その排水処理が難しくなる。福島第1原発の事故は、建屋外に汚染水が大量にたまっていることがわかった。海などへさらに汚染が広がる危険もある。厳しい綱渡りの作業が続く。
「矛盾した行動のバランスを取りながらの作業になる」
原子力安全・保安院もその困難さを認める。汚染水(放射線量1時間あたり1000ミリシーベルト以上)の排水対策に妙案はないのだ。キャスターのテリー伊藤がため息まじりにいう。
「毎日、新しいトラブルが出てくる」
誰しも同じ思いだろう。
地中や海に流れ出している懸念
司会の加藤浩次が日本テレビ解説委員の倉澤治雄に、「そもそも放射能に汚染された水がたまっている原因は何なのですか」と聞いた。
倉澤「原子炉の圧力容器の中の水が格納容器の外に出て、床や配管などを通して出てきているとみられています」
加藤「いまどんどん真水を入れているが、これが汚染されて、外にどんどん出てくることにならないのでしょうか」
倉澤「そこが問題。だが、いま大切なのは圧力容器を冷やすことで、そのためにはどうしても水が必要なんです」
加藤「放射能がさらに拡散するのではないかと不安になりますよ」
倉澤「地中に漏れたり、海に流れたり、あるいはすでに流れたのではないかという指摘もありますね」
原発事故対策の3原則「止める」「冷やす」「閉じ込める」のうち、「閉じ込める」が破られた可能性もあるのだ。安定化のためには電源を使ったポンプを稼働させて効率的に冷却しなければならないが、放射線の濃度が高いと復旧作業が進まない。復旧作業のためには汚染水の処理が必要だが、一方で冷却のために注水は続けなければならない。袋小路に入ってしまった。