<クラシコ>今年で日本プロサッカーリーグは設立から19年目を迎えた。トップリーグの下にJ2リーグ、その下にJFL(日本フットボールリーグ)があり、Jリーグを目指すチームも年々増加している。さらに、JFLの下には全国を9つのブロックに分けた「地域リーグ」という社会人リーグがある。この映画は北信越リーグに所属するAC長野パルセイロと松本山雅FC(昨年まで所属)に密着したドキュンメンタリーだ。初めてメガホンを取った樋本淳監督は、サッカーを通して明治時代の廃藩置県以来の「因縁」を描く。
廃藩置県以来のライバル意識
タイトルの「クラシコ」はスペイン語で「伝統」という意味で、スペインのサッカーリーグ、リーガ・エスパニョーラのレアル・マドリードとFCバルセロナの試合のことを指す。この試合の熱狂ぶりは、スペイン国内ではワールドカップを凌駕するといわれている。
AC長野パルセイロと松本山雅FCの「クラシコ」は、本家に比ぶべくもないが、長野と松本のサポーターにとっては引くに引けない一戦となる。サポーターはスタジアムで応援し、馴染みの店で酒を酌み交わし、激論の果てに眠り、またスタジアムへ行く。すでに生活の一部になっていることが大いに伝わってくる。サポーターの「熱さ」の根底にあるのが土地への愛着だ。サポーターの声を聞いていると、サッカーを越えたところで、「自分の愛する土地はどこにも負けたくない」という強い郷土愛が解かる。また、「Jリーグを目指す」というのがアイデンティティーになっている。そして、彼らは熱く楽しそうだ。それは、Jリーグ創設から地元にプロサッカーチームが存在した地域のサポーターには味わえない「楽しさ」なのかもしれない。
ていねいに描かれる信州の美しい四季
信州の四季を美しく描き、撮影に根気と思い入れを強く感じさせる力作だ。地域リーグという一般的には馴染みの薄い世界を描くことにより、「地域から盛り上げていく」というJリーグの理念である「百年構想」が着々と実を結んでいることを証明している。
最後に、東日本大震災で大きな被害を受けた仙台を本拠地にするベガルタ仙台をはじめとするサッカーチームが、これまでと変わらぬ活躍をすることを願ってやまない。長野、松本と同様、ここでも地元への愛着が大きな力となることは間違いないのだから……。
川端龍介
おススメ度☆☆☆☆