ピー、ピー、ピー。福島第1原発に異様な警告音が鳴り響く。ポケット線量計が強い放射線を感知した瞬間だ。
18日(2011年3月)から19日の深夜、防護服に身を包んだ東京消防庁のハイパーレスキュー隊員による3号機への放水作業の映像が初めて公開された。指揮をとっていた高山幸夫統括隊長が映像を見ながら語る。
「車両から出ないで!」
18日23時13分―現場敷地内で打ち合わせをしたあと、緑色の防護服を着た放射線測定担当の隊員から「現在400マイクロシーベルト。問題なし」のゴーサイン。
23時33分―隊員が「東電の誘導でそのままPS1(ポンプ車)と一緒に向かいます」と連絡を入れ3号機へ。
23時55分―隊員が放水現場にたどりつく。「左に破壊された建屋があります。まったく(形が)見えませんけれど」の声。
23時56分―映像には屈折ポンプ車の塔を立ち上げる隊員たちの姿が映る。
「この地点、(放射)線量高くありません。活動時間に余裕があります」
しかし、その8分後…。
19日00時12分―ピー、ピー、ピーと連続して警告音が鳴り響く。
「100マイクロシーベルト、あまり車両から出ないでください。できるだけ車両の左側を通ってください。できるだけ左側を通って」
隊員の絶叫が聞こえた。この時の隊員の気持ちを、高山は「異様な雰囲気の中、常に危険な中で警告音が鳴ると、なおさら恐怖心を煽られるんですよね。でも、警告音が鳴っても活動しなければいけない…」と語った。
海江田経産相はそんな彼らに…
3号機は23日に原因不明の黒煙を上げ、放水作業は中断したままになっている。
キャスターの小倉智昭「専門家ですら、この黒煙は何かが燃えているとしか言えないといっている。このままどうなるのか。ほっとくわけにもいかないし…」
眞鍋かをり(女優)「自衛隊とかハイパーレスキュー隊とかが一番危険なところへ行っている。こういう映像を見ると頭が下がります」
そのハイパーレスキュー隊を海江田経産相は、「早く放水しないと処分するぞ」と脅した。敗戦色が濃くなった戦争末期、現状を知らない軍上層部が焦りから特攻隊員に突撃命令を下した構図にどことなく似ていないだろうか…。