根拠ない菅と枝野の「安心です」
さて、一番知りたい原発についてだが、文春の「『暴走ドミノ』被爆の真相」と、朝日の「福島原発で本当に起きていること 広瀬隆」が読み応えがあった。東電の清水社長は地震が発生した11日は出張で関西にいて、名古屋空港から東電のヘリで急遽戻ろうとしたが、夜10時を過ぎていたので空港側に拒否され、何とか防衛省に頼み込んで使用許可を取ったと文春にある。このために「約1時間を無駄にした」(文春)そうだが、そういえば、中国の北京で一緒だったグループの中に東電のトップ2人がいた。
以前からスケジュールが決まっていたから、彼らにとって不運ではあるが、重大な意志決定をする人間が、その時、東京にいなかったことになる。その初動の遅れが致命的なことにならなければいいのだが。
さらに文春は、菅首相が現場の迷惑も考えず福島第1原発を視察したことを、「視察の直後に1号機の水素爆発という深刻な事態に陥った。一体、何を指示したのかと問われるでしょう」(官邸関係者)と批判している。「安心です」と繰り返してきた枝野官房長官も、途中から、東電側が正確な情報をあげてこないといわんばかりの発言に変わったが、それまで、何を根拠に安全だといってきたのかと追及している。
朝日の広瀬氏は、長年原発の危険性を訴えてきた論客だが、こうした非常事態の時に読むと、背筋が寒くなってきて、居ても立ってもいられなくなる。
広瀬氏は「事故の経緯を見ると、悲観的にならざるを得ない」として、このまま炉心溶解が進行すると、鋼鉄製の原子炉を溶かして、地下水とぶつかって水蒸気爆発を起こし、大量の放射線が飛び散る「チャイナシンドローム」が始まるという。
さらに「日本で1基の原子炉が全部放射能を放出するような事態が起きた場合、風向きや風力次第ですが、(中略)ほぼ1週間で日本全土が放射能に包まれる可能性があります」というのだ。
今回の事故で、東電側は、千年に1度の巨大地震が起きると想定できなかったというが、誰もが原子炉の大事故を起こす原因として、真っ先に想像するのは「大地震」ではないかと批判する。
また、13日午後、福島原発周辺で、1時間あたり1557・5マイクロシーベルトを記録したことは、「それに24時間と365日を掛けて年換算すると、通常の年間被爆量の1万3千倍を超えます。それで平気なのでしょうか。レントゲンや航空機に乗ったときの被爆量と比較するのは犯罪です」といいきる。何とかこの危機を回避してほしいと、期待もよせているのだが。