「地震、地震!!」
子供を背負った日本人主婦らしい女性の悲鳴、ゴーという地鳴のような音の中で逃げまどう人びと…。NZクライストチャーチの地震発生の瞬間をビデオカメラが捉えていた。
場所は観光名所の大聖堂前。日本人観光客が撮影した53秒間の映像で、ブレの激しい映像がかえって生々しい。逃げまどう人の中で重い金属でも落下したのか、カーンカーンと大きな音。揺れがおさまったと思ったら、また大きな余震が起こって悲鳴が上がる。地面には大聖堂のてっぺんにあった十字架が横たわり、大聖堂の前では数人が呆然と立ち尽くしていた。
映像を見た歌手の佐々木秀実「びっくりしました。いざ地震となると、人間って本当に動けないんだなって。どうしていいか分からなくなる」
崩壊ビル沈下で手間取る救助
地震発生(2011年2月22日午後零時51分)から25日で3日目、被災者生存の境目という72時間が経過しようとしている。この時点で分かった死者は113人、行方不明者は依然200人以上に上っている。
とくに、倒壊したキングスエデュケーションのあったビルの瓦礫の下には、まだ27人の日本人学生がいて安否が不明だ。地元の警察では、「この現場に生存者がいる可能性はありません」と早々と見限った感じだが、救助に当たる日本救助隊は「生存の可能性がある限り、諦めないで作業をしていく」と話す。
それにしても、倒壊した同ビルの瓦礫はそれほど多くない。なぜこの程度の瓦礫で救助が進まないのか。防災システム研究所の山村武彦所長がナゾを解いてくれた。
「情報によると、このビルの部分だけが3mほど沈下しており、瓦礫が地面に引き込まれるようになったので少なく見える。固い地盤だとかえって倒壊したときの衝撃は強く、これだと衝撃が和らぎ、中に空洞ができることもある。生存者がいる可能性がある」
現地に入った家族も「奇跡を信じようと思っているが、覚悟を徐々に決めていかなあかんのかなぁ」と切ない胸の内を明かす。