「幸福の科学」と私の20年前の因縁
さて、「週刊文春」と新潮が熱心にやっているが、私が取り上げなかった記事に宗教団体「幸福の科学」の夫婦ゲンカ問題がある。今週も両誌で、大川きょう子総裁夫人が夫と教団のおかしさを告白している。彼女は2月24日に教団を名誉毀損で訴えるというから穏やかではない。
信者数は世界80か国1200万人を自称し、大川隆法総裁が本を書けば、ほとんどがベストセラーの上位に顔を出す。最近では、政界進出も目論んで「幸福実現党」なるものを立ち上げ、400万票集めると豪語したが、23万票しか集められず失笑を買った。
この教団と私との因縁は、きょう子夫人が新潮の前号で触れているが、1991年、私がフライデーの編集長の時に遡る。フライデーで「幸福の科学」を取り上げ、中で大川氏の経歴に触れた箇所が、大川氏と信者たちの怒りを買い、信者たちが講談社社内に大挙乱入し、全国の信者たちからの電話やFAX攻撃で社業が妨害されたのである。
その後、信者で作家の景山民夫氏や歌手の小川知子氏を先頭に、「フライデーを廃刊せよ」というシュプレヒコールをあげ、毎日のように講談社の前でデモを繰り広げた。
夫人によれば、怒った大川総裁は「3日で廃刊にしようと」気勢を上げたが、「次の週もフライデーが出た時の脱力感はすごくありました。あれ、3日で廃刊に追い込めるはずじゃなかったの、と」
私も初めて知ったのだが、その時、教団内部は別のことで教団の電話回線がパンクするほどのクレームが寄せられていたのだ。
「その原因は、出鱈目な伝道(信者獲得)が横行したことです。総裁が信者100万人を目指せといったものの、そう簡単には集まらない。そこで職員たちは同窓会名簿や電話帳を丸写しして、どんどん会員登録していったのです。そこへ教団の雑誌の購読申込書を送れば、『入会した覚えはない』というクレームが山と寄せられるのは当然の流れです」
あきれ果てたというしかないが、それでも、お金を出してくれる信者はだいたい3万人はいるそうだ。その信者たちに1口10万円の植福(お布施)を募り、本やグッズを買わせるから、教団には年間300億円が流れ込む。
夫人は、「今のペースでお布施を集め続けたら、信者が老後の蓄えを全部吐き出してしまって、問題になる」から、総裁に話してくれと教団幹部から頼まれたことがあるという。05年からは株取引にまで手を出したが、結局、損をしたそうだ。
「幸福の科学」は当初、他の新興宗教と違うスマートで緩やかな宗教団体だと思われていた。だが、結局は信者から金を搾り取り、多くの女性を侍らせ、並みの新興宗教団体になっていってしまったのだ。
私がこの問題を取り上げなかったのは、この教団が、自分の予想どおりになったことを自慢しているようにとられるのがイヤだったからだが、私が想像した以上に、夫婦仲も教団内部も危ういようだ。