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「尖閣ビデオ」既存メディアがパスされた深刻な不信

   今週は軟派記事に見るべきものはない。もう1本の注目記事は、「週刊朝日」の「sengoku38の告白 いま明かされる尖閣ビデオ流失の真相」。元海上保安官・一色正春氏がインタビューに答えているが、メディアの末端にいる人間として気になる箇所がいくつかある。それは既存メディアが、こうした内部告発の受け皿ではなくなってしまったという、当然ながら、厳しい現実である。アメリカのCNNにはビデオを送ったが、日本のメディアには送らなかったことを聞かれ、こう答えている。

「不信感というよりは可能性です。日本のメディアでは、おそらく公開できなかったでしょう。わずかとはいえ海外メディアのほうが公開される可能性が高いだろうと思いました」

   また、Youtubeでビデオが流れ、あっという間に情報が拡散していく速さに驚き、犯人捜しが始まったマスコミへの不信感をこう語る。

「捜査当局の発表報道というより、意図的にリークされたものをマスコミは裏もとらずにそのまま書く。発表に突っこみを入れたり、反対の意見を書いたりすれば、もうエサをあげませんよとばかりに、情報を遮断する。どこかの国の情報統制のやり方と同じようなものだなと思いました」

   チュニジア、エジプトで広がった市民デモは、バーレーンやリビアでも大きな反政府運動になりつつある。これはツィツター革命、SNS革命ともいわれる。ウィキリークスが次々に外交機密文書を公開し、既存メディアはその後追いをするだけである。

   既存メディアはこのまま立ち枯れてしまうのか。先日会った『報道特集』の金平茂紀キャスターは、既存メディアにいる人間たちのジャーナリストの資質の劣化を嘆いていたが、彼はまた、「ツィツターやSNSはツールです。ツールを使って、われわれジャーナリズムにいる人間が、何を伝えなければいけないか、真剣に考え、ロールモデル(お手本)をつくればだいじょうぶだ」といっていた。

   週刊誌はどのようなロールモデルをつくるのか、これから見せてほしいものだ。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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